第237章 寺田真治の心遣い

寺田凛奈は自然と目を向け、虫がついた蘭の鉢植えが隅に捨てられているのを見た。その蘭はまだ鉢に入ったままで、明らかに誰かに捨てられたものだった。

  そしてこの鉢植え……

  寺田凛奈は眉をひそめた。昨日、ウェブページで誰かが自分に助けを求めていた、まさにあの蘭の鉢だった!

  二人が近づくと、木田柚凪が身を屈めて蘭の鉢を抱き上げ、注意深く観察した。「この花、結構きれいじゃない?」

  もちろんきれいだ。

  この花は一目見ただけで長年大切に育てられたことがわかる、稀少な存在だった。

  ただ虫がついてしまって、もったいない。

  でも、その持ち主もあまりにも冷たすぎる。返事もせずに花を捨ててしまうなんて?

  しかし瞬時に、寺田凛奈は理解した。

  この種の花の虫は感染性があり、もし花室に置いたままで他の花と一緒にしておけば、他の花まで台無しにしてしまう恐れがある。