「くそ、臭いがきついな!」
木田柚凪は姉御肌の口調で、遠慮なく言った。「私の大好きな香水の香りが、全部台無しになっちゃった!」
寺田凛奈は彼女を一瞥して言った。「だから外でって言ったのに、室内でやりたいって言ったのはあなたでしょ……」
木田柚凪:「だって部屋の中なら座れると思ったんだもん。早く、庭に運んで。どこに置くの?」
寺田凛奈は辺りを見回し、庭に大理石のテーブルがあるのを見つけると、そこに歩み寄り、蘭の鉢を置いてから、自分で調合した薬液を少し噴霧した。
丁寧に周囲に噴霧している時、突然怒鳴り声が聞こえた。「やめなさい!」
寺田凛奈は驚いて、木田柚凪と共に入り口の方を見た。そこには福山さんが両手を腰に当て、まるで雛を守る母鶏のように二人の前に駆け寄って来て、立ちはだかった。「この花に何をしようとしているの?」
寺田凛奈:?
木田柚凪:?
二人は福山さんを見つめた。さっき入ってきた時、庭の門が開いていたので、そのまま入って来られたのだろう。でも、この人は誰だろう?
考えていると、福山さんが口を開いた。「この鉢は私のものよ!」
木田柚凪は悟った。「そうだったんですか。私、庭でこの鉢を見つけて、誰かが捨てたのかと思って拾ってきたんです!」
福山さんは花が萎れかけているのを見て、慌てた。「どうして捨てるの?あなたたち、目利きができないの?それにこんな高価な蘭の鉢を、どうして勝手に拾ってくるの?」
木田柚凪は照れくさそうに言った。「この鉢、そんなに高いんですか?普通の鉢植えだと思ったんです!」
福山さん:「……」
彼女が一歩前に出て、鉢を持ち去ろうとした時、寺田凛奈が突然彼女を止めた。「この鉢があなたのものだという証拠はありますか?」
この鉢は高価なので、他人が花を騙し取ろうとしているのではないかと警戒していた。それに、福山さんの年齢を考えると、ネットで彼女に治療方法を尋ねるような人には見えなかった。
結局、年配の人はあまりネットを使わないし、そのウェブページも一部の人しか見ないだろう。
福山さんは驚いた。「証明が必要なんですか?」
「もちろんです。」