寺田凛奈の声は小さく、淡々とした一言でしたが、座席にいる全員の耳にはっきりと届きました。
大広間全体が再び突然静かになりました。
全員が信じられない様子で寺田凛奈を見つめました。彼女は車椅子を押しながら、ゆっくりと前に進み、数人の前に来ました。
階上。
今、藤本奥様は焦って階下に向かっていました。階段を下りながら、秋田さんに不満を漏らしました。「私はずっと凜人のこのガールフレンドはダメだと言っていたのよ。小さな家の出で、大舞台に立てないわ。見てごらんなさい、こんなに騒ぎを起こして、とんでもないわ!」
「義理の姉妹なのに、どうしてうまくいかないのかしら?大勢の前で、こんなに彼女の面子を潰すなんて!」
「寺田さんを見てごらんなさい。なんて教養があって品格があるのでしょう。ここにいる女性たちの誰一人として彼女の悪口を言う人はいないわ。寺田家の威厳を恐れているのか、寺田さん自身の人格的魅力なのか、これこそが能力よ!凜人と婚約したのが寺田家のお嬢様だったらどんなにいいかしら!実の娘でなくてもいいわ、寺田雅美でも十分よ!」