寺田凛奈の声は小さく、淡々とした一言でしたが、座席にいる全員の耳にはっきりと届きました。
大広間全体が再び突然静かになりました。
全員が信じられない様子で寺田凛奈を見つめました。彼女は車椅子を押しながら、ゆっくりと前に進み、数人の前に来ました。
階上。
今、藤本奥様は焦って階下に向かっていました。階段を下りながら、秋田さんに不満を漏らしました。「私はずっと凜人のこのガールフレンドはダメだと言っていたのよ。小さな家の出で、大舞台に立てないわ。見てごらんなさい、こんなに騒ぎを起こして、とんでもないわ!」
「義理の姉妹なのに、どうしてうまくいかないのかしら?大勢の前で、こんなに彼女の面子を潰すなんて!」
「寺田さんを見てごらんなさい。なんて教養があって品格があるのでしょう。ここにいる女性たちの誰一人として彼女の悪口を言う人はいないわ。寺田家の威厳を恐れているのか、寺田さん自身の人格的魅力なのか、これこそが能力よ!凜人と婚約したのが寺田家のお嬢様だったらどんなにいいかしら!実の娘でなくてもいいわ、寺田雅美でも十分よ!」
藤本奥様はぶつぶつと言い続けました。「私が彼女にどんなに反対していても、今は彼女のためにフォローしなければならないのよ。凜人が彼女を公に認めたばかりなんだから!彼女の面子は凜人の面子であり、藤本家の面子なのよ!」
秋田さんは藤本奥様を支えながら言いました。「ゆっくり行きましょう。エレベーターに乗るようにお勧めしましたのに、あなたは拒否なさいました。そのお膝で階段を下りられますか?」
藤本奥様は怒って言いました。「リビングのあの状況では、エレベーターで下りるのはもっと遅いわ!」
彼女は息を切らしながら階下に着いたとき、ちょうど石丸慧佳の「強力な実家の後ろ盾がなければ、あなたはいずれ藤本家に嫌われ、離縁されて追い出されるわよ!」という言葉を聞きました。
彼女は急に怒りを覚え、口を開こうとしたその時、寺田凛奈のあの軽やかな一言を耳にしました。
藤本奥様はその場で固まってしまいました。