藤本家の駐車場には、高級車が集まっていた。
世界限定モデルも少なくなく、この1、2千万円の車はその中に置かれると、本当に目立たなかった。
だから最初は誰の車か気づかなかった。
寺田雅美がホールの方へ歩いていると、数歩進んだところで突然呼び声が聞こえた。「寺田さん!」
振り返ると、石丸慧佳が富樫佑咲を支えながら近づいてくるのが見えた。
石丸慧佳は富樫佑咲に何か言うと、彼女から離れて雅美の方へ歩いてきた。近づくと、雅美のドレスに触れて笑った。「そうか、このドレスをあなたが借りていたのね!あなたにとてもよく似合っているわ!今夜はきっと一番の美人になるわよ!」
彼女の声が少し大きかったので、周りの人々が振り向いてしまった。
寺田雅美は少し不快になった。
寺田家は控えめな贅沢を重んじており、公の場でこのように派手なことを最も嫌う。彼女は人々に私的に話題にされるのが一番好きだったが、面と向かってこのように言われるのは少し行き過ぎだと感じた。
彼女は口を開いた。「私はただ適当に着ただけよ。石丸さんのドレスもとても素敵です!」
しかし、石丸慧佳は気にせず、彼女の性格を知っていた。「謙遜しないでよ!みんな目があるんだから、このドレスは業界でも有名なのよ。ブルーローズ以外に、このドレスに匹敵するものはないわ!」
寺田雅美は目を伏せて微笑んだ。「中に入りましょう。」
「まだよ!」
石丸慧佳は笑いながら彼女の腕を引っ張った。「渡辺家の車を見たところよ。ここで少し待っていれば、きっと彼らが来るわ。そうしたら、あなたたち二人が並んで立てば、目のある人なら誰でも誰が美しいか分かるわ!藤本さんにも見せてやりましょう、彼が間違った人を選んだってことを!」
これを聞いて、寺田雅美は少し驚いた。「その寺田凛奈は美人じゃないの?」
石丸慧佳は少し躊躇した。
頭の中に寺田凛奈の白くて無垢な小さな顔、大きくて美しいアーモンド形の目、手のひらサイズの顔が浮かんだ。セレブよりも美しいようだった。