寺田凛奈はゆっくりと口を開いた。「私たちの安平堂で一番多いものは、薬じゃないの?」
石丸和久:??
寺田凛奈は欠伸をして言った。「おばさん、家の製薬工場の一室を貸してもらえない?」
石丸和久はすぐに頷いた。「問題ないわ!」
寺田凛奈が昼食を食べ終わると、石丸和久は彼女を渡辺家の製薬工場に連れて行った。
渡辺家の製薬工場は京都郊外にあり、規模は大きく見え、中はとても清潔だった。中に入ると漢方薬の爽やかな香りが漂ってきた。
渡辺光春はいつもここにいて、彼らが来たのを聞くとすぐに出迎えた。「ママ、姉さん、空いている実験室の準備ができましたよ。」
石丸和久は頷いた。「じゃあ私は先に帰るわ。準備してね。」
彼女は少し心配そうだった。
渡辺家の現在最高の薬は莫愁丸だが、莫愁丸には価格があり、量産もされている。他人に20粒の莫愁丸を贈るのは大きな贈り物だが、藤本奥様に贈るとなると、彼女から見れば数十万円に過ぎない。
凛奈のこの薬は本当に大丈夫なのかしら?
彼女は少し心配になった。
残り一週間しかない。凛奈の薬が期待外れだった場合に備えて、良いものを探しに行かなければ。
そこで、石丸和久は毎日朝早くから夜遅くまで、様々なオークション会場を回って贈り物を探し回った。
実験室では。
寺田凛奈は準備作業だけで丸一日かかり、夜になってようやく全ての準備が整った。
渡辺光春はずっと側で手伝いながら、好奇心に駆られて尋ねた。「姉さん、一体何の薬を作るの?」
寺田凛奈は少し考えてから答えた。「安神丸よ。」
藤本奥様の脳には血腫や腫瘤があったことがあるので、長期的に安神丸を服用すれば、とても良い効果があるはずだ。
渡辺光春はホッとした様子で言った。「安神丸?それなら私たちの安平堂にたくさんあるわ。しかも安いし、適当に持っていけば...あれ、違う。安神丸の配合はこんなじゃないはず?」
安神丸にこんなに多くの薬材は使わないはずだ。
彼女がそう思った瞬間、寺田凛奈がゆっくりと言った。「うん、五十嵐安神丸よ。」
渡辺光春は呆然とした。「五十嵐安神丸?」