第275章 スポンサーのおじいちゃん~

前回の生配信で彼女の顔を画面で見たけど、映像と現実では少し違いがあった。

  DNA検査の結果を知ってから今まで、彼は病院に籠もっていた。まるで逃亡兵のように、向き合うことができなかったからだ。

  しかし、現場に来てみると、彼は実は彼女を見たいと思っていた。彼女を通して、20年以上前の渡辺詩乃を見たいと思っていた。

  宴会場には多くの人がいた……そして二人が入ってくるとすぐに、藤本家の人々は気づいた。

  寺田亮は絶対に尊敬に値する長老だ。だから執事はすぐに藤本凜人に知らせた……

  その時、藤本凜人はデザートコーナーに向かっていて、寺田凛奈を見つけると、彼女に低い声で話しかけた。「さっきの数人、調べてみたら、やはり誰かが悪さをしていたんだ。」

  寺田凛奈は一口でデザートを食べ、腹を満たした。

  彼女は大きく食べるのが好きで、時間の節約になる。先ほどケーキの見た目を気にしなかったのも、どんな形であろうと彼女にとってはどうでもよく、味だけを気にしているからだ。

  今、そうやって食べた後、口が動いていて、唇の端にクリームが付いていた。

  藤本凜人はそれを見て、瞳の光が少し沈んだ。

  彼は自分の口元を指さして、寺田凛奈に言った。「ここにクリームがついてるよ。」

  寺田凛奈は眉を上げ、彼が指し示した方向に従って口を拭いた。しかし、藤本凜人が指したのは自分の右側で、彼女の場合は左側になってしまった。

  だが、彼女はそれを知らないので、左側を拭いてしまい、結果として右側に残っているクリームはそのままだった。

  藤本凜人はまた指さした。寺田凛奈は躊躇しながらもう一度拭いた。

  まだ違う?

  彼女の口全体がそんなに大きいわけじゃないのに!

  寺田凛奈が躊躇している間に、藤本凜人は少し呆れたような様子で手を伸ばし、彼女の唇に触れた。

  男性は武道の練習をよくしているせいか、指にはうっすらと胼胝ができていて、温かい大きな手が彼女の少し冷たい唇に触れると、寺田凛奈の体は少し硬直した。

  彼女は男性の指が唇の上でやさしく揉むのを感じた。その力加減と温かさに、彼女は何か異様な感覚を覚えた。まるで誘惑されているかのような。