「助けて?」
木田柚凪は焦って、急かした。「凛奈、早く見に行って!」
あの美しい中年女性に何かあったんじゃないか?
寺田凛奈は車から降りたばかりでその言葉を聞き、少し驚いた。なぜか彼女はその女性に好感を持っていたので、うなずいた。「案内して。」
車に隠れていた藤本建吾は困惑して福山さんを見ていた。これは祖母の側近の福山さんじゃないか?
彼も車から降りて、近づこうとしたが、突然思いついた。もし祖母に見つかったら、ばれてしまうじゃないか!
彼は祖母の健康を心配していなかった。毎年健康診断を受けているからだ!
そして暴君が祖母に住まわせているこの周辺には警護員がいるし、本当に何かあれば、警護員たちがこんなに静かなはずがない。
だから、福山さんが他のことに気を取られて彼に気づいていないうちに、彼は木田柚凪の手を引いた。「ママ、先にドアを開けて。子供にはあまり適していない環境だから、ここでママと凛奈ママを待っているよ。」
木田柚凪は「……」
彼女は子供ほど考えが及ばなかったが、すぐに反応して、急いでドアを開け、藤本建吾を中に入れてから、寺田凛奈の後を追った。
2分後。
温室の中で、木田柚凪は目を見開いて目の前の美しい女性と、その女性が手に抱えている鉢植えの花を見つめ、呆然としていた。「あなたが言った『助けて』って、この鉢植えの花を助けるってこと?」
美しい女性はうなずいた。「そうよ、他に何があるの?」
木田柚凪と寺田凛奈は黙り込んだ。
二人は福山さんの「助けて」という言葉を聞いて、彼女に何かあったのかと思っていた。
今考えてみれば、そうだよね?福山さんは寺田凛奈が医者だって知らないんだから!
木田柚凪は口角を引きつらせた。「ちゃんと説明してよ。私たち走ってきたんだから。」
福山さんは必死になって言った。「この花は奥様の命なんです。『助けて』って言ったのは少しも大げさじゃありません!」
「……」
木田柚凪は黙っていたが、寺田凛奈は佐竹璃与の手にある花に目を向けた。虫がついていたようで、殺虫剤を使ったらしい。虫はいなくなったが、花もダメージを受けていた。