各家庭が誕生日プレゼントを持ってくる時、必ず記録しなければならない。主人が最後に誰が何を贈ったのか分からなくなるのを防ぐためだ。
今回の藤本家の盛大な誕生日パーティーでは、藤本家に取り入ろうとする人々が既に多くの高価な贈り物を送ってきていた。
プレゼントを記録する係の人は、そんなに多くの高価な贈り物を見て、すでに麻痺していたので、この瞬間口を開いた:「薬の箱1つです。」
箱?
寺田雅美は小さく笑った。
貴重な薬ほど、丸で計量される。結局のところ、一丸が手に入りにくいからだ。
なのに彼らは箱で薬を贈った……
おそらく莫愁丸だろう?
莫愁丸は今、市場価値が2万円一粒だ。箱で贈っても、そんなに高額にはならない……
寺田雅美はほっとして、口を開いた:「私の贈り物は、薬1粒です。」
プレゼントを記録する人が顔を上げて彼女を見た:「はい、でも寺田さんはどんな貴重な薬をお贈りになったんですか?」
この質問は、純粋に彼の個人的な好奇心からだった。
寺田雅美は笑って言った:「五十嵐安神丸です。」
パタン。
記録係の人の手からペンが机に落ちた。彼の声も一気に高くなった:「五十嵐安神丸?」
寺田雅美の後ろにいた石丸慧佳も、この言葉を聞いて更に驚き、声を張り上げた:「五十嵐安神丸?」
この言葉に、みんなが一斉に振り向いた。
羨望のまなざしを感じながら、寺田雅美は顎を少し上げ、ようやく自信を取り戻した気がした。彼女は軽く言った:「ええ。」
そう言って、パーティー会場へ向かった。
入り口に残った人々は、すでに感嘆の声を上げていた:「五十嵐安神丸、これは本当に大盤振る舞いだね!」
「そうだね、この薬は今や手に入りにくくなっているよ!三原御医にもう一度薬を調合してもらえるのは、寺田家くらいだろうね!」
「寺田家は流石トップクラスの名門だね。やるときはやるんだ。これと比べたら、渡辺家が贈った薬の箱、おそらく莫愁丸だろうけど、羨むほどのものじゃないな……」
渡辺家の莫愁丸はすでに有名で、1箱贈るのも立派な贈り物だった。
でも五十嵐安神丸と比べたら、やはり見劣りがする。
寺田雅美はこれらの言葉を聞いて、嬉しくなった。