第305章 寺田治の秘密〜

寺田凛奈のこの言葉が出るや、その場は一瞬静まり返った。

  寺田雅美も眉を少し上げた。

  寺田治はさらに驚いたが、すぐに反応し、尋ねた。「渡辺家からもらったんだろう?」

  「違うわ」

  寺田家に住むようになった時、石丸和久はお金をくれようとしたが、莫愁丸の返金がまだ完全に口座に入っておらず、彼らの手元にもあまりなかった。

  石丸和久は100万円を用意した。結局、渡辺家全体でもその時100万円しかなかったのだから。

  しかし凛奈は受け取らず、こっそりカードを部屋に置いていった。

  寺田治は驚いた。「じゃあ、これは?」

  凛奈:「私自身のカードよ」

  自分の……つまり彼女自身が稼いだお金?

  揚城から来たばかりの少女に、いくらのお金があるというのだろう?

  しかし彼女がそう言うからには、寺田治は5000円を受け取り、ついでに言った。「じゃあ、ちょっと貸してくれない?」