寺田凛奈のこの言葉が出るや、その場は一瞬静まり返った。
寺田雅美も眉を少し上げた。
寺田治はさらに驚いたが、すぐに反応し、尋ねた。「渡辺家からもらったんだろう?」
「違うわ」
寺田家に住むようになった時、石丸和久はお金をくれようとしたが、莫愁丸の返金がまだ完全に口座に入っておらず、彼らの手元にもあまりなかった。
石丸和久は100万円を用意した。結局、渡辺家全体でもその時100万円しかなかったのだから。
しかし凛奈は受け取らず、こっそりカードを部屋に置いていった。
寺田治は驚いた。「じゃあ、これは?」
凛奈:「私自身のカードよ」
自分の……つまり彼女自身が稼いだお金?
揚城から来たばかりの少女に、いくらのお金があるというのだろう?
しかし彼女がそう言うからには、寺田治は5000円を受け取り、ついでに言った。「じゃあ、ちょっと貸してくれない?」