寺田凛奈が駐車場に着いたとき、ちょうど寺田真治も出かけようとしていた。二人が出会うと、寺田真治は突然彼女を呼び止めた。「寺田さん。」
寺田凛奈は足を止め、彼を見た。「寺田さん、何かありますか?」
この二人のやりとりが始まると、二人ともちょっと戸惑った。
同じ寺田姓なのに、なぜかこんなにも他人行儀な感じがするのだろう?
寺田真治は先に自分の気持ちを抑え、ポケットからキャッシュカードを取り出して彼女に渡した。「あなたの好意は、寺田治が心から感謝しています。でも、こんな高価なカードは、あなた自身で大切に保管してください。」
高価?
寺田凛奈は眉を上げた。実際、彼女はそれほど高価だとは思っていなかった。
しかし、寺田真治が返してきたので、彼女も遠慮なく受け取り、そしてついでに尋ねた。「この時間にまだ仕事に行くんですか?」
寺田真治:「……」
彼の沈黙に気づいて、寺田凛奈は彼を見た。「どうしたんですか?」
寺田真治は少し呆れて答えた。「子供を迎えに行くんです。」
これを聞いて、寺田凛奈は子供を迎えに行く時間を忘れていたことに罪悪感を感じるどころか、むしろこう言った。「芽も一緒に連れて帰ってください。ありがとうございます。」
そう言い残して、彼女は先にGクラスに乗り込み、そのまま車を走らせた。
まだその場に立ち、車に乗ろうとしていた寺田真治:?
いつもは穏やかな人だが、この瞬間、思わず口角をピクリとさせた。
この人はどれだけ無神経なんだ!
彼は額をさすり、学校へ向かった。
学校の門に着くと、木田柚凪が藤本建吾の腕を引っ張りながら尋ねているのが見えた。「お母さん最近何してるの?うちに遊びに来てって言って。うちはばあちゃん一人で住んでて、退屈で死にそうなんだよ。」
藤本建吾:「……ああ、わかった。」
木田柚凪がもう何か言おうとしたとき、遠くから彼を見つけて、すぐに立ち上がって背を向けて歩き去った。彼が口を開く時間も与えなかった。
寺田真治:「……」
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寺田凛奈は瀬戸さんから送られてきた地図に従って、あるオフィスビルにやってきた。