第332章 老いぼれの病状

寺田凛奈がこの電話をかけた理由は、まさにこのことだった。

  彼女はもちろん、息子の要求で親友に迷惑をかけるようなことはしない。結局のところ、真由美は真治と他の人の娘なのだから。

  彼女には分かっていた、真由美がダンスの素質があることを。

  そして彼女は知っていた、この数年間木田柚凪が後継者を探し続けていることを。

  彼女自身がダンスで一定の段階に達した後、自分のダンスブランドを立ち上げ、適切な後継者を見つけることは非常に難しかった。

  真由美との接点は多くないが、この子が性格的に善良であることは見て取れた。

  だからこそ、話をしてみようと思ったのだ。

  今、木田柚凪の言葉にある「この子」とは、真由美のことだろう?

  彼女はためらいながら尋ねた。「あなたはどう思う?」

  木田柚凪は唇を噛んで、ため息をついた。「私も何をすべきか分からないわ。彼女はダンスが大好きで、私がダンスを教えているとき、こっそり授業に来ていたの。私は知らないふりをして、時々彼女が私の指導を受けずに自分で踊っているのを見かけると、少し恍惚として、小さい頃の自分を見ているような気がして...」

  彼女は授業後、人通りの少ない場所を通り過ぎるとき、白いプリンセスドレスを着て、つま先立ちで軽やかに踊る寺田真由美を目にした。

  寺田真由美は生まれつき骨格が小さく、彼女と同じように痩せて背の高い体型だった。

  このような体型は、ダンスをしないのはもったいない。

  彼女は才能を惜しんでいたが、寺田真由美の母親のことを思うと、自分には手に負えないと感じた。

  木田柚凪は考えれば考えるほど悩んだ。「もういいわ、もう少し様子を見ましょう!」

  寺田凛奈は彼女をじっと見つめ、突然口を開いた。「時には様子を見ているうちに、チャンスを逃してしまうこともあるわ。」

  木田柚凪は確かに真由美に満足していたはずだ。そうでなければ、こんなに悩んでこんなに多くの言葉を彼女に語ることはなかっただろう。彼女はいつも率直な人で、物事を受け入れることも手放すこともできる人だった。

  これまで、寺田凛奈は木田柚凪が何かを手放せないでいるのを見たことがなかった。