寺田凛奈は何も言わず、台上の試合を見続けた。
寺田洵太のおしゃべりが耳元でずっと響いていた。
「くそっ!こんな巧妙な攻撃も避けられるのか?速さだけじゃなく、力も大幅に上がってるじゃないか!」
「福山海優は絶対負けるよ!」
「以前、あいつをいじめたことがあるけど、こんなに強かったなんて気づかなかったな。おかしいな、武術の才能があるなら、2年前にも表れてるはずだよな!」
寺田洵太はずっと裏で活動していて、これらの勢力についてよく知っていた。
京都全体で、どこかに強い不良が現れれば、彼は必ず把握していた。
そして辻本凌也の今の姿は、明らかに彼と同等の能力を持っているように見えた。しかし、寺田家の今の世代の7人の男の子の中で、寺田亮が彼だけを選んだのは、彼が生まれながらにして武術に適していたからだ!
しかし、彼がこれほど長い間練習してきたのに、他の人が2年で追いついてしまったのか?
寺田洵太は納得できなかった!
「福山海優、やっつけろ!」
寺田洵太は周りの観客たちと一緒に大声で叫んだ。
しかし残念ながら、福山海優は辻本凌也の相手ではなく、5分も経たないうちに敗れてしまった!
福山海優は土俵の上に倒れ、全身が痛くて立ち上がれなかった。彼は手を伸ばし、口を開こうとした。「降参...」
「します」という言葉がまだ出てこないうちに、辻本凌也はさらに一歩前に出て、直接彼の腹部を蹴り、地面を滑って後ろに数メートル飛ばした。
福山海優はさらに痛みで血を吐いた。
側にいた人が叫んだ。「辻本凌也、何をしているんだ?福山海優はもう降参したぞ!」
辻本凌也は台の上に立ち、にやりと笑った。「そうか?俺には聞こえなかったけど、彼が言ったのか?」
「......」
福山海優はその言葉を言い終わっていなかった!
辻本凌也は再び福山海優を見た。「降参するのか?」
福山海優は何か言おうとしたが、口を開くとまた血を吐いてしまった。辻本凌也は手を広げた。「見ただろう?彼は何も言っていない。だから試合は続行だ。」