周囲の警官たちは即座に寺田凛奈の方を見た。彼女を取り押さえようとした瞬間、藤本凜人の落ち着いた声が聞こえた。「石山、もし彼女を止めようとするなら、容赦しないぞ」
石山博義は顎を引き締めた。
彼は動かず、依然としてその場に立っている寺田凛奈を見つめ、瞳には深い思考の色が浮かんでいた。
しばらくして、ようやくゆっくりと口を開いた。「彼女を行かせろ」
この言葉とともに、周りの全員が道を開けた。
寺田凛奈は拳を握りしめた。
彼女は、藤本凜人が自分のためにこんなことをするとは想像もしていなかった。
石山を人質にとるなんて、重罪だ!
彼女から見れば、藤本凜人との関係は、二人の子供がいるという絆だけだった!
寺田凛奈はそれ以上考えるのをやめ、頭を振って決然と外へ向かった。
一歩進むごとに速度が増し、最後には走って飛び出していった。