第391章 彼女の誕生日

頬に残る柔らかな唇の温もりがまだ感じられた。

木田柚凪は自分の頬に触れながら、目の前の小さくて臆病そうな真由美を見つめ、ふと胸の奥に感覚が湧き上がった。自分の子供が自分にキスをする時も、こんな感じなのだろうか?

彼女はしばらくの間、言葉を失っていた。

真由美は柚凪が黙り込んでいるのを見て、怯えてしまい、慌てて目を潤ませながら答えた。「先生、怒ってますか?」

木田柚凪は自分が怒るべきかどうか分からなかった。

むしろ、真由美にダンスを教えること自体が間違いだったのではないかと思った!

彼女と寺田真治の子供は行方不明になった。

なのに、ここで寺田真治の子供にダンスを教えている。しかも、その子が自分にキスをした時、押しのけもせずに、まるで受け入れたかのように。

自分がこんなことをしていいはずがない!