「ママ、もし僕が数学が大好きだったら、勉強させてくれないの?」と藤本建吾が口を開いた。
「絶対にそんなことはないわ」と寺田凛奈。
芽はゲームが好きで、みんなそれが良くないことは知っていたけど、芽を喜ばせるために、凛奈はいつも許可していた。ただ、時間を制限しているだけだった。
藤本建吾は頷いた。「でも、真由美のママは彼女がダンスが好きなのを知っているのに、習わせてくれないんだ。それに、真由美はママをとても怖がっているよ」
怖がっている?
どんな子供も母親に対して、恐怖心を抱くべきではないはずだ。
寺田凛奈は藤本建吾が言葉を間違えたのかもしれないと思った。「お母さんが厳しいからかしら?」
藤本建吾は首を振った。「違うよ」
彼は少し考えてから口を開いた。「暴君も厳しいけど、僕のためを思ってくれているのは分かるんだ。時々、暴君に対抗するために、僕は絶食することもある。なぜなら、暴君が妥協してくれるって分かっているからだよ」
「でも真由美がママを怖がっているのは、ママが妥協してくれるかどうか分からないからなんだ」
寺田凛奈は呆然とした。
藤本建吾の言葉はごちゃごちゃしていたけど、彼女には理解できた。
藤本凜人が彼の父親だから、日常的に厳しくても、たとえ建吾を叩いたことがあったとしても、建吾は凜人を尊敬しているのであって、恐れてはいない。
しかし真由美の母親は、真由美にとっては見知らぬ人、悪人のように感じられ、基本的な安心感さえ持てないでいる。
彼女は眉をひそめた。「これは全部真由美が君に話したの?」
藤本建吾は首を振った。「僕が自分で観察したんだ」
寺田凛奈は眉をひそめた。
もし事態が本当に建吾の言う通りだとしたら、凛奈はこの件を真剣に再考する必要がある。しかし、建吾はまだ5歳だ。彼の結論を一方的に信じるわけにはいかない。
寺田凛奈は深刻な表情で口を開いた。「分かったわ、建吾。私もこの件に注意して、真由美のことをよく観察してみるわ。もし本当だったら、あなたのおじさんに伝えるわね」
同時に、彼女は眉をひそめた。
この世界に本当に自分の子供を虐待する母親が存在するのだろうか?
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郊外。