録音が終わると、2階全体が静まり返った。
寺田史之助は信じられない様子で寺田雅美を見つめていた。
この温和で上品な妹が、裏では妻にこんな言葉を投げかけていたなんて、彼にはどうしても想像できなかった。
彼は秋田花泉の方を見た。
これまでは妻のお嬢様気質や、思慮深さの欠如、譲歩する心の無さを気にしていた。結局のところ、実家ではお姫様のように甘やかされて育ったのだから。
しかし今の彼女は目が赤く腫れており、明らかに大きな屈辱を受けていた。
そうだ。
妻は確かに気性が激しいが、いつも潔く、行動も爽やかだ。こんなにまで追い詰められなければ、こんな喧嘩になるはずがない。
秋田花泉は、これまでの喧嘩と同じように、寺田史之助が自分の不適切な行動を指摘して終わると思っていたが、予想外の展開に驚いた!
彼女は驚いて寺田凛奈を見た。
目が再び赤くなった。
彼女は震える声で寺田史之助に向かって言った。「聞いたでしょう?これは服一枚の問題じゃないわ」
寺田史之助はすでに心を痛め、顔色を変えていた。彼は急いで2、3歩進んで秋田花泉の前に立ち、そして寺田雅美を見つめた。「雅美、お前がこんな風に考えていたなんて!!」
寺田雅美は唇を噛んだ。彼女はまだ何か説明しようとした。「お兄さん、私は...」
しかし寺田史之助はすでに彼女の言葉を遮った。「これまで義姉がお前のことを何か言うたびに、俺はいつもお前の味方をしてきた。でも、まさかお前がこんな二枚舌の人間だったとは!表では一つの顔を見せて、裏では別の顔を見せるなんて!俺の妻を侮辱していたのは、お前だったんだ!」
彼は寺田雅美を指差し、激怒して言った。「お前がこんな自己中心的な人間だとは、思いもよらなかった!」
寺田雅美は深く息を吸い、焦って口を開いた。「お兄さん、そういう意味じゃないの、私は...」
しかし寺田史之助はもう彼女の話を聞こうとしなかった。直接秋田花泉の肩を抱き、部屋に入りながら言った。「妻よ、ごめん。お前が家でこんな風に罵られていたなんて、俺は全然知らなかった。ひどすぎる。俺たちは人の軒先を借りる必要なんてない。外にも家はあるんだ。今すぐ出て行こう!」