堀口咲織は今日木田柚凪に電話をした時、寺田真治もそこにいたことを思い出した。その後彼は追及しなかったが、今ここに来ている……
彼女の心は沈んだが、顔には笑みを浮かべながら近づいていった。「真治、来てくれたのね……」
堀口家の両親は使用人の言葉を聞いて、慌てて2階の書斎から降りてきて、彼を迎えた。「寺田さん、どうしてここに?何かあれば私たちが寺田家に伺いますのに」
寺田真治はまだにこにこしていて、目は細められ、話さないときでも穏やかに見える。まるで常に笑顔の虎のようだ。
しかし堀口咲織は彼の目に冷たさを感じ取った。
彼女は唾を飲み込み、背筋が寒くなった。
寺田真治は彼女を見て、ゆっくりと口を開いた。「今日私が直接訪ねてきたのは、堀口さんと婚約を解消した後、あまり素直ではないようだからです」