藤本柊花はすぐに顔を上げ、好奇心に駆られて廊下の方を見た。
寺田凛奈は美しすぎて、嫌いになれない。せめてこの小さなお荷物を嫌いになれないと、お兄さんがあまりにも損をしてしまう。
結局のところ、建吾はとてもかわいくて愛らしいのだから!
この小さな女の子が建吾よりも可愛くない限り、お兄さんがなぜ突然娘を持つことになるのだろうか?
藤本柊花が心の中でお兄さんのことを気の毒に思っていると、小さな影が螺旋階段のところに歩いてくるのが見えた。
彼女はプリンセスドレスを着ていて、ふわふわのスカートがとても可愛らしかった。
頭にはリボンのカチューシャをつけていて、小さな子供は非常に愛らしかった。
藤本柊花は最初に彼女の服装に目を引かれ、その後でその小さな顔を見た。その見慣れた顔立ちが、瞬時に彼女の目に飛び込んできた!
藤本柊花は完全にその場に立ち尽くしてしまった!
これは、これは……
これは建吾じゃないか?
彼女は驚愕し、信じられない様子で寺田凛奈を見た。
寺田凛奈は彼女を指さし、寺田芽に言った:「この方がお母さんの……同僚よ」
彼女は長い間考えて、やっと同僚という言葉を思いついた。
言い終わった後、寺田芽が人に呼びかけていないことに気づいた。彼女は首を傾げ、困惑して寺田芽を見ると、寺田芽が驚いて叫んだのが聞こえた:「おばさま?」
朝、彼女が出かける時に階下でおばさまを見かけたが、おばさまが顔を上げた時、お兄ちゃんが急いで来て、彼女を押し戻してしまったのだ。
だから、彼女はこれがおばさまだと分かったのだ!
「おばさま?」
寺田凛奈は少し戸惑い、藤本柊花を見た。そして内管理人の福山亜由莉が近づいてきて、驚いて口を開いた:「藤本さん、また藤本さんを探しに来られたのですか?彼は午後に用事があって会社に行っていて、寺田家にはいません」
「……」
寺田凛奈は理解した。どうりで藤本柊花の目が少し見覚えがあると思ったのだ。藤本凜人に似ているのだ!
そして、彼女も藤本姓……これは藤本凜人のあの感情的に近い従妹なのだろう?
そう考えていると、藤本柊花が眉をひそめ、寺田芽を指さして寺田凛奈に言った:「あなた、動かないで!」