第478章 私はQです

部下たちはその言葉を聞いて慌てふためき、次々と彼を止めようとした。「若様、それは……」

しかし、言葉が終わらないうちに、男は彼らを押しのけた。「どけ、みんなどけ!今日は絶対にあのデブちゃんに馬鹿にされるわけにはいかない!」

彼らは力で彼に敵わず、簡単に振り払われ、男はエレベーターホールへと向かった。

彼の様子を見て、部下たちは互いに顔を見合わせ、突然口を開いた。「仕方ない、いつもの手を使うしかないな」

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寺田凛奈はメッセージを送ってしばらく待った。

相手は純粋な心の持ち主で、まるで子供のようだった。知能は高いものの、挑発すれば効果があるかもしれないと思ったが、予想に反して返信はなく、下りてくる様子もなかった。

彼女が躊躇している間に、ホテルのエレベーターホールから見覚えのある姿が現れた。

彼を見て、寺田凛奈は少し驚いた。

相手も丁度彼女を見つけ、目を輝かせながら近づいてきた。近づく途中、ハンカチで口を押さえて数回咳き込んだ。

何かを咳き出したようで、ハンカチを確認してから折りたたみ、ポケットにしまった。そして穏やかな笑みを浮かべながら近づいてきた。「寺田さん、こんなところでお会いするとは」

寺田凛奈は驚いて「臼井先生?」と声を上げた。

目の前の人物は臼井真広の叔父、臼井陽一だった!

寺田凛奈は目を細めて左右を見回してから尋ねた。「ここで何をしているんですか?」

臼井陽一は再び軽く咳き込んでから答えた。「取引先がここにいて……薬材の商談に来たんです。ゴホゴホ……寺田さん、お久しぶりです。相変わらずお綺麗ですね。ところで、ここで何をされているんですか?」

寺田凛奈が答える前に、藤本柊花が二人の間に割り込んできた。左右を見回してから寺田凛奈の肩を叩いた。「お義姉さん、ひどいじゃないですか!」

彼女が言葉を終える前に、寺田凛奈が口を開いた。「この方は私の元婚約者の叔父よ」

藤本柊花の言葉は喉に詰まった。

臼井陽一は再び二回咳き込み、穏やかに笑った。渋い声が心地よく響いた。「寺田さん、そんな言い方をされると辛いですね。もう友人とは言えないのでしょうか?」

その言外の意味は、先ほどの紹介の仕方が距離を置きすぎていると言いたげだった。

寺田凛奈は少し考えてから、これまで何度も関わりがあったことを思い出し、頷いた。「そうですね」