京都の某高級ホテルにて。
長身で痩せた影が座っていた。その下顎と唇しか見えなかったが、艶やかな唇は妖艶さを漂わせ、唇の端が微かに上がり、真っ白な歯が覗いていた。その笑みは小悪魔のように邪悪だった。
しかし【もう捕まえたぞ】という一文を見た時、彼の笑みは一瞬で凍りついた。そして突然立ち上がり、両側の部下たちに急いで言った。「急げ!奴らが来たぞ!すぐに撤退だ!」
全員が即座に荷物をまとめ、簡単な荷物を持って、一団となって外へ向かった。
しかし、出口に着いた途端、彼は突然足を止めた。そして窓際に滑り寄り、下を覗き込んで慎重に観察した後、突然また口を開いて怒鳴った。「くそっ!またあの女に騙されるところだった!」
彼は部屋の中を行ったり来たりしながら、ぶつぶつと悪態をついた。「陰険!狡猾!ずる賢い!狡猾!……」
この四つの言葉を言い終えると、もう日本語が思い浮かばないようで、必死に考えた末、怒りながら叫んだ。「賢い!利口!機敏!絶対に私の下僕にしてやる!」
周りで彼を守っている部下たち:「……」
若き主に、賢い、利口、機敏は褒め言葉だと指摘したかったが……
しかし今の彼が怒りで跳び上がらんばかりの様子を見て、彼らは賢明にも口を閉ざすことを選んだ。
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藤本柊花は寺田凛奈のスマートフォンを覗き込んで言った。「誰とメッセージしてるの?まさか兄さんに内緒で、外で若いイケメンを見つけたとか?義姉さん、そういうのは良くないわよ!」
寺田凛奈:?
彼女が否定しようとした時、藤本柊花が続けて言った。「楽しみは分かち合うものよ。イケメンがいたら、独り占めしないで私にも教えてね~」
寺田凛奈:「……」
藤本家にはこんなに強力な遺伝子があったのか。だから寺田芽があんなに顔フェチになったのね。うん、絶対に私の遺伝子じゃないわ。
寺田凛奈はスマートフォンを彼女に渡した。
藤本柊花はメッセージを見て首を傾げた。「義姉さん、あなたが教えた住所、もう調べたじゃない?国際的な大ホテルで、毎日日本に来る外国人が泊まってるわ。さっき確認したけど、昨日は百人以上チェックインしてて、その百人を一人一人調べるしかないけど、相手は捕まえられなかったわ!」
寺田凛奈:「……ああ、ちょっと脅かしてみただけよ。」
このバカが毎日私の前でそんな話し方をするから。
藤本柊花:「……」