倉田幸歩は足を止め、心の中で罵りながら、必死に笑顔を作って振り返り、寺田凛奈に向かって笑いかけた。「そうですね。今回のことは私の過ちでした。もし皆さんが遺体を適時に持ち出していなければ、私は本当に証拠隠滅をしていたかもしれません。私の不注意でした。申し訳ありません。石山さん、戻ってから始末書を提出しますが、それでよろしいでしょうか?」
退くことで進むとは、さすが賢い人だ。
寺田凛奈は口を尖らせた。
仕事上のミスなら、そこまで追及する必要はないはずだが、倉田幸歩のこのミスは性質が余りにも悪質だった。彼女は当初、堀口泉弥の本当の死因を突き止められず、自分の診断ミスを隠蔽するために、全ての罪を木田柚凪に押し付けたのだ!
こんな人間を、どうして許せるだろうか?!
寺田凛奈は石山博義が口を開く前に、直接言った。「本当に単なる職務怠慢なんですか?」