寺田凛奈は笑った。「ネット?」
「うん」石山博義は口を開いた。「でも、一部の人は被害者を非難して、子供を誘拐した罪は厳罰に処すべきだ、死んで当然だと言っている。母親として、木田柚凪の行動は間違っていない、裁判所は情状酌量すべきだと!」
当時、堀口泉弥は子供を奪おうとして、ネット上で大騒ぎになった。
今度は逆に批判を受けることになった。
たとえネットユーザーが真相を知らず、本当に木田柚凪が彼女を殺したと思っていても、死んで当然だと思うだろう。
相手側のこのネット世論工作はあまり上手くいっていないな!
寺田凛奈は目を伏せて笑った。「うん、じゃあ真相を公開しましょう!」
「いいね」
寺田凛奈が電話を切ろうとした時、相手が突然また口を開いた。「あの...」
寺田凛奈は一瞬止まった。「うん?」
相手は言った。「部署に来てくれないか。一つは遺体の検査と、血液検査と検死報告書を確認するため。もう一つは...倉田幸歩がずっとあなたの告発をしているんだ」
「ちっ」
寺田凛奈は口を開いた。「彼女の醜態を見に来いってこと?」
「...」石山博義は少し黙った後、口を開いた。「倉田幸歩も同僚だからね。残念ながら、今回の事件で大きな過ちを犯した。彼女の末路を知りたくないか?」
「...実は知りたいわね」
結局、他人が恥をかくのを見るのが好きなんだから、寺田凛奈は唇を曲げた。「わかった、今から行くわ」
電話を切ると、WeChatで石山博義が住所を送ってきた。日本京都市中心部のあるオフィスビルだった。
寺田凛奈は少し食事を済ませ、出かけようとした時、リビングのソファに座っている木田柚凪が真由美と一緒に遊んでいるのを見かけた。
木田柚凪は今、保釈状態なので、思い切って休暇を取って学校に行かなかった。ついでに真由美も休ませて、母娘二人で家で絆を深めることができた。
彼女を見て、寺田凛奈は何かを思い出したように、階段を上がって行った。再び降りてきた時、手にはラベルのない軟膏の箱を持っていた。「はい」
木田柚凪は受け取って「これは?」
「傷跡を治す薬よ」
木田柚凪はこの言葉を聞いて、少し黙った後、軟膏を受け取り、彼女に「ありがとう」と言った。