ドアはすぐに使用人によって開けられ、高岡さんは尋ねた。「三原御医に会いに来ました。」
使用人はそれを聞いて答えた。「少々お待ちください。今、お客様と面会中です。」
お客様……
高岡さんは少し戸惑った。
三原御医は長年、ほとんど客を見なくなっていた。訪問してきた人や、学びを求める人のほとんどには会わないようにしていた。
彼は体調があまり良くなく、記憶にも少し問題があるという話だった。
漢方医学界でまだ地位のある彼ら数人の老人以外は、ほとんど三原御医に会うことができなかった。
しかし今日は漢方医学交流会が開催されており、あの老人たちは皆交流会に出席しているはずだ。この時間に、誰が三原御医を訪ねてくるというのか?
そう考えながら、高岡さんは尋ねた。「どなたですか?」
使用人は笑うだけで、何も言わなかった。
高岡さんは自分が余計なことを聞いたと悟り、笑いながら言った。「では、一声かけていただけますか。ここで待っています。」
「はい。」
使用人が三原御医の部屋に入った時、ちょうど三原御医の息子が寺田凛奈を見送っているところだった。「寺田、こちらです。」
寺田凛奈は言った。「師兄、お体にはお気をつけください。」
三原御医の息子も父から医術を学んでいたため、年齢差は大きかったものの、寺田凛奈は彼を師兄と呼ばなければならなかった。
三原御医の息子は笑って言った。「いやぁ、年を取るとこんなものさ。父上にはもう少し長生きしてもらって、もう少し長く仕えられたらと思っているんだ!」
寺田凛奈はその言葉を聞いて、心の中で深くため息をついた。
子供の頃、いつも三原御医が自分の息子を凡才だと罵り、漢方医学の道で自分の技を継承できないと言っているのを聞いていた。
その時、この師兄はいつも憎めない笑顔を浮かべていた。
しかし今となっては……三原御医は90歳を超え、60歳を超えた息子が傍にいるというのは、それはそれで幸せなことではないだろうか?
子供が大勢いて、みな優秀でも、海外に行ったり、遠くに住んでいたりして、そばにいられる人は少ないものだ。
そう考えると、寺田凛奈は思わず藤本建吾と寺田芽のことを思い出した……うん、賢い子供たちだから、きっと将来は親離れするだろう。