第535章 寺田家の利益を狙うなんて、お前に資格があるのか？

リリの車は中に入れなかった。門の前が完全に塞がれていたからだ。

彼女は車を路肩に停め、DNA検査の報告書を持って、人混みをかき分けながら、大股で寺田凛奈の方へ向かった。

寺田凛奈は依然として傍らに立って見ていた。リリから報告書を受け取ると、唇の端がわずかに上がった。やはり彼女の予想通りだった！

しかし彼女はすぐには前に出て何かを言うことはせず、現場の状況を観察し続けた。その杏色の瞳には、すでに全てを掌握しているような威厳が漂っていた。

リリは小声で尋ねた。「アンティ、私やっと……」

彼女は二本の指で小人が歩くような仕草をしながら、身振り手振りを交えて尋ねた。「寝に行っていいですか？」

寺田凛奈は「……どうぞ」と答えた。

「ふぅ」

リリはほっと息をつき、中庭に向かって二、三歩歩き出した。しかし、たった数歩進んだだけで携帯が鳴り出した。相手が何を言ったのかは分からないが、リリの表情が一変し、イライラした様子で髪をかき乱しながら怒鳴った。「くそっ！」

そして、振り返って携帯を持ったまま寺田凛奈に不満を漏らした。「私がいないと寺田洵太は何もできないんです。結局、私には休む運命がないみたいですね」

寺田凛奈：？

彼女は躊躇いながら尋ねた。「介護士を何人か雇ったんじゃなかったの？」

リリはその言葉を聞いてさらに怒りを募らせた。普段は寺田洵太をからかい、毎日病院で彼を怒らせていたリリだが、今は諦めた表情で言った。「最初は彼をからかうために、毎回私が世話をしていたんです。彼は最初は恥ずかしがっていましたが、そのうち慣れてきて。私が他の人に変えたら、すごく不快がって、それで我慢してるんです！」

寺田凛奈：「……」

リリは彼女を見て尋ねた。「寺田洵太に尿バッグをつけてもいいですか？」

「……」寺田凛奈は彼女を見つめ、静かに答えた。「だめよ」

寺田洵太は自尊心の強い男だ。もし本当に尿バッグをつけたら、きっと精神的なダメージを受けるだろう。自慢好きで目立ちたがりの彼に、自分は役立たずだと感じさせたくなかった。

リリの先ほどの言葉も冗談だった。患者によって対応は変えなければならない。まして寺田洵太はあんなに整った顔立ちをしているし、彼女も気に入っているので、やめておこうと思った。

彼女は肩をすくめ、さっき入ってきた人混みを抜けて、車で去っていった。