寺田凛奈は画面をしばらく見つめた後、ようやく何かに気づいた。
そうだ、この世界で、既知のハッカーの中で、彼女と互角に渡り合える人物は、Yの他に誰がいるだろうか?
藤本凜人はムヘカルの件を知った後、一日中姿を見せず、結局彼女と同じ疑いを持って、深夜にシステムに侵入したのか?
彼女は口角をピクリと動かした。
藤本凜人が先に侵入していたせいで、彼が相手機関の内部の人間だと思い込んでしまったのだ。
彼女が口角をピクリと動かした時、携帯が鳴り、電話から藤本凜人の低い声が聞こえてきた。「また私に罪をかぶせるつもりか?」
寺田凛奈は二人が出会った頃を思い出した。その頃は自分が何かをする度に、皆が一様に藤本凜人の助けだと思い込んでいた。当時は身分を明かしたくなかったので、否定もしなかった。