第534章 秋田七恵の正体!

寺田凛奈は画面をしばらく見つめた後、ようやく何かに気づいた。

そうだ、この世界で、既知のハッカーの中で、彼女と互角に渡り合える人物は、Yの他に誰がいるだろうか?

藤本凜人はムヘカルの件を知った後、一日中姿を見せず、結局彼女と同じ疑いを持って、深夜にシステムに侵入したのか?

彼女は口角をピクリと動かした。

藤本凜人が先に侵入していたせいで、彼が相手機関の内部の人間だと思い込んでしまったのだ。

彼女が口角をピクリと動かした時、携帯が鳴り、電話から藤本凜人の低い声が聞こえてきた。「また私に罪をかぶせるつもりか?」

寺田凛奈は二人が出会った頃を思い出した。その頃は自分が何かをする度に、皆が一様に藤本凜人の助けだと思い込んでいた。当時は身分を明かしたくなかったので、否定もしなかった。

でもあの頃は、二人はまだ親しくなかったので、彼に罪をかぶせるのは少し申し訳なかった。

今は...もう慣れてしまったのだろうか?

寺田凛奈は咳払いをして、話題を変えた。「何か発見したの?」

藤本凜人は彼女の意図を察し、低く笑った。その笑い声が受話器を通して彼女の耳に届き、耳が妊娠しそうな感覚になった。

藤本凜人はようやくゆっくりと話し始めた。「システムの中にムヘカルの資料が一切ないことに気づいた!」

寺田凛奈は一瞬固まり、反射的に理解した。「問題があるわ。」

その言葉と同時に、藤本凜人は彼女への制限を解除し、寺田凛奈もシステムに侵入した。

二十数年前、ムヘカルがM国に行ったのは実は密入国だった。だからシステムに彼のチケット購入記録や出国記録はないはずだ。

しかし密入国する前、ムヘカルは京都の不良で、木田柚凪の母親と付き合っていた時、事件を起こして警察に捕まり、それで木田柚凪の母親との関係が切れたのだ。

だから、警察の記録に彼の資料がないはずがない。

ないということが最大の問題なのだ!

藤本凜人が口を開いた。「三時間以上かけて調べたが、確かに彼の資料は一切ない。」

寺田凛奈は深く息を吸った。「わかったわ。」

彼女はシステムから退出した。

システムにムヘカルの資料がないということは、二つの可能性しかない。一つは、ムヘカルが有名になった後、ハッカーを雇って資料を削除させたということ。