第506話 ショーの幕が上がった!

藤本凜人はその言葉を聞いて足を止め、表情が曇った。

彼がまだ何も言わないうちに、藤本奥様が大股で歩いてきて、冷ややかに鼻を鳴らした。「何を心配しているの?寺田家がそんな態度を取るということは、娘を嫁がせられないことを心配しているということよ!それに、彼らが婿を選べるなら、私たちだってあなたの兄の嫁を選べるわ!」

この言葉に、藤本凜人は低い声で「祖母!」と呼んだ。

警告の意味が十分に込められていた。

藤本奥様は彼にそう呼ばれ、少し怒り出した。「凜人、一人の女に惑わされてはいけないわ!私が考えたんだけど、建吾は必ず戻ってこなければならないわ。あの子はあなたの血を引いているし、私たちの次世代の最適な後継者なのよ!本来なら建吾の実母の家の力が弱いことを心配していたけど...今はいいわ、寺田家の血統があれば、きっと素晴らしいものになるわ!」

「……」

藤本奥様が今でも自分の過ちに気付いていないのを見て、藤本凜人は目を伏せた。「祖母、私が妻を娶るとすれば、彼女一人だけです。」

その言葉を残し、彼は服を整えて立ち去った。

藤本奥様は彼の背中を指差しながら、藤本柊花に言い付けた。「聞いてごらん、彼は何を言っているの?男が一人の女に足を引っ張られるなんて、あり得ないわ!」

藤本柊花はこれについて意見を述べなかったが、それでも口を開いた。「祖母、兄さんは今まで一度も実行できないことは言ったことがありません。」

藤本奥様は言葉に詰まった。

彼女は確かに孫の性格をよく知っていた。それに、以前の寺田凛奈に対する不満は、今ではほとんど消えていた。

田舎育ちで見識が狭いとはいえ、二人の子供を産んだという点で、この欠点は我慢できた。

奥様は眉をひそめた。「寺田家は虚勢を張っているだけよ。見ていなさい、誰も彼女を娶りたがらないわ。結局、彼女の身分は特殊なのだから!連れ子の話は置いておいても、寺田家は今後寺田真治が家を継ぐわけだし、彼女は寺田真治の実の妹ではないのよ。寺田亮がいなくなったら、基本的に彼女を支える人はいなくなるわ。それに、彼女の寺田家での立場も微妙になるでしょう。自ら名乗り出る人なんて、ほとんどいないはずよ!」