メッセージを送信した後、入江桂奈は携帯を見ていないようで、すぐには返信がなかった。
寺田凛奈は携帯をしばらく見つめた後、脇に放り投げ、シャワーを浴びに行った。
寺田芽は藤本建吾と顔を寄せ合い、そっくりな小さな顔に眉をひそめながら、不満そうに言った。「お兄ちゃん、おじいちゃんがまたママに彼氏を紹介しようとしてるの!はぁ!」
藤本建吾が大丈夫だよと慰めようとした時、寺田芽が羨ましそうな顔で口を開いた。「パパもいつか私にたくさんのお兄さんを紹介してくれないかなぁ?」
藤本建吾:?
彼は寺田芽がパパとママの別れを心配しているのかと思っていたのに、結局ママを羨ましがっていただけだった?!本当に救いようがない!
藤本建吾は口角を引きつらせながら、バスルームの方を見た。
そして、手に持っていた本を置き、ゆっくりと部屋を出て行った。
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「寺田さん、私が来る前に主人が言っていたんですが、昔渡辺詩乃を巡って争った時にあなたに負けたので、今度はお嬢様に息子との面会のチャンスをください!せめて一度会って、お付き合いを試してみてはいかがでしょうか!」
石丸和久の方から情報が得られないと見るや、ある人々は標的を寺田亮に向け始めた。
いつも生気のない寺田亮の顔に、今やゆっくりと誇らしげな笑みが浮かんでいた。
以前は誰もが彼の前で渡辺詩乃という名前を意図的に避け、誰も口にしなかったが、今では彼は完全な誇りを持ってその名を聞いていた。
彼は笑いながら言った。「そのお願いは必ず聞きましょう!」
藤本凜人:!!
突然、自分に味方してくれる年長者がいないことに腹が立った。
彼が恨めしそうに藤本奥様を見ると、彼女の表情はすでにとても気まずそうだった。彼女はそこに立ち、両手で杖をつきながら、寺田亮に何か言いたそうだが、何を言えばいいのか分からないという様子だった。
藤本凜人は目を伏せ、心の中でため息をついた。
父は五歳の時に愛人と家出し、母も引っ越して戻ってこなかった。彼は幼い頃から祖母に育てられ、だからこそ祖母に対して深い尊敬の念を抱いていた。
だから、祖母に対して強く出ることはできなかった。
それに、もし祖母が凛奈をずっと気に入らないままなら、彼女の後宮争いのような手段で、きっと寺田凛奈に面倒を起こし続けるだろう。