何が起きても、寺田凛奈は木田柚凪の面倒を見続けるつもりだった。
彼女は意図的にそう言って、ムヘカルに真実を話させようとしていた。
しばらくして、ムヘカルからメッセージが返ってきた:【黒猫、お前の人柄は信頼している。だから、柚凪を頼む!】
寺田凛奈は眉をひそめた。
暗殺者連盟は違法組織とはいえ、ほとんどが国外で活動しており、江湖の義理を重んじていた。ムヘカルが引き受ける依頼のほとんどは復讐の手助けのようなもので、決して罪のない者は殺さなかった。それが彼女がこの組織に留まっている理由でもあった。
ムヘカルは一見大雑把でヤクザのような態度だが、実は繊細で賢明な人物だった。
暗殺者は国内で殺人を行ったことはなく、理論的には帰国後に問題が起きるはずがないのに、これは一体どういうことだろう?
ムヘカルが話そうとしないのを見て、寺田凛奈はブラックパンサーに電話をかけることにした。
ブラックパンサーはムヘカルの第一助手で、今回も彼と一緒に日本に戻ってきたボディーガードの一人だった。彼は元々ブラックパンサーという名前ではなかったが、彼女の黒猫という名前が有名になった後、名前を変えて彼女と同じ「黒」の字を使うことにしたのだ。
寺田凛奈はその時呆れていた。
彼女は自分が「黒」姓ではないと言おうとしたが、ブラックパンサーは生粋の外国人で日本文化をよく理解しておらず、本を読むのも好きではなく、どうしても信じようとしなかった。
そして、組織の中で誰かが彼を黒猫と呼ばず本名で呼ぶと、その人に怒りを向けるようになり、結局、本当に名前を変えてしまった。
彼女は音声変換器を使って尋ねた:「ムヘカルはどうしたの?」
ブラックパンサーはため息をついた:「何か問題を起こしたみたいです。詳しくは話してくれませんが、私たちに早く日本を離れるように言いました。でも彼自身は残ると…」
寺田凛奈は眉をひそめた:「あなたたちは先に行って。」
ブラックパンサーにも知らされていない事とは、ムヘカルは一体何をしたのだろう?
考えていると、リビングから木田柚凪の声が聞こえてきた:「凛奈、早く来て、ウェディングドレスの試着に付き合って!」