結婚式場全体に銃弾がガラスを貫通する音が響き渡り、その弾丸はムヘカルの後頭部に向かって飛んでいった。このままでは彼の頭を貫通し、即死させてしまうところだった!
そうなれば、全ての悔しさを地下に持ち込み、永遠に秘密として葬られることになるはずだった。
しかし電光石火の間に、寺田凛奈は一歩前に出て、ムヘカルのスーツを掴み、横に引っ張った!
弾丸は彼の頭の横をかすめ、皮一枚を擦り剥いただけで済んだ!!
その場にいた全員が呆然とした。
ムヘカル自身も、こんなことが起こるとは予想していなかったようで、完全に固まってしまった。
そしてちょうどその時、石山博義たちが近づいてきそうになったところで、寺田凛奈は相手の袖を引っ張り、彼の銃を再び自分の腰に向けさせ、両手を上げながら叫んだ。「動かないで!」
石山博義たちは再び足を止めた。
その一瞬の間に、ムヘカルは我に返っていた。
様々な場面を経験し、数え切れないほどの生死の境を潜り抜けてきた彼が先ほど動揺したのは、これが娘の結婚式だったからだ。
しかし彼はすぐに正気を取り戻し、再び寺田凛奈を脅し始めた。
さらに、スナイパーの位置を探して避けようとした時、寺田凛奈は一歩前に出て、彼とスナイパーの間に立ちはだかった!
イヤホンから冷たい声で怒鳴る声が聞こえた。「人質は何をしているんだ?!」
誰かが小声で注意した。「人質ではありません。特殊部門の法医学者の寺田凛奈です!」
その冷たい声はさらに焦りを帯びた。「なら彼女は我々のイヤホンを付けているはずだ。寺田凛奈、聞こえているか?」
寺田凛奈は表情を変えず、その場で動かなかった。
冷たい声が再び口を開いた。「どうにかして位置をずらせ。少し動くだけでいい、それで外れる!」
寺田凛奈はまだ動かなかった。
「くそっ!」
その冷たい声は少し焦っているようだった。「どこの法医学者だ?我々のシステムの専門訓練を受けていないのか?」
「報告します。外部からの招聘法医学者です!」
冷たい声は苛立ちを隠せなかった。「外部招聘だからこそダメなんだ!スナイパー、照準を定めろ。他の参列者のために、確実に仕留めなければならない!」
その声が出た直後、突然、低く澄んだ声が響いた。「倉田隊長、それは良くないでしょう?」