第546章 もう1つの仮面〜

どうやって逃げたの?

特殊部門に内通者がいることは、みんなが知っていることだ。

ムヘカルは自白して罪を軽くしようとしているのか?

木田柚凪のために、彼は本当に考え直したようだ。

寺田凛奈と石山博義が話そうとした時、尋問室のドアが突然開き、50歳前後の中年男性が大股で入ってきた。

彼は怒りに満ちた表情で、入室するなり寺田凛奈を睨みつけて言った。「さっきは何だったんだ?!特殊部門の職員として、たとえ外部の法医学者であっても、銃を向けられるようなことがあってはならない!」

寺田凛奈は眉をひそめて彼を見た。

その時、石山博義が口を開いた。「こちらは倉田隊長です。私の師匠でもあり、私がこの仕事に就いた時から指導してくれた方です。」

寺田凛奈は彼の方を見た。

さっき狙撃手に発砲を命じた人物がこの人なのか?

なぜか、この人物から漂う雰囲気は石山博義とそっくりで、どちらも冷たい男性タイプだが、寺田凛奈は彼があまり好きになれなかった。

石山博義は倉田隊長の方を向き、ゆっくりと説明した。「隊長、寺田さんは外部の法医学者で、特殊部門で収集した遺伝子薬剤の研究だけを担当しているので、体力面で劣るのは当然です。」

倉田隊長は寺田凛奈を睨みつけた。「体力が劣る?私から見れば、彼女はスパイそのものだ。言え、なぜさっきムヘカルを庇って弾を受けようとしたんだ?」

寺田凛奈は眉を上げ、アーモンド形の瞳に無邪気な表情を浮かべた。「どんな弾ですか?」

倉田隊長:「お前は彼と狙撃手の射線の間に割り込んで、彼を守ろうとした。もう演技はやめろ!」

寺田凛奈:「倉田隊長、何をおっしゃっているんですか?私は外部の法医学者で、力も弱いのに、どうして狙撃銃の射線なんてわかるはずがありますか?」

倉田隊長は言葉に詰まった。

傍らの石山博義は冷たい表情で彼女を一瞥した。

寺田凛奈はその場に立ったまま、まだ無邪気な演技を続けていた。

倉田隊長は怒り心頭で、石山博義に向かって彼女を指差しながら罵った。「見ろ、自分の無知さを盾に開き直っている。こんな人間は、我々特殊部門には必要ない!」

石山博義は眉をひそめた。