寺田凛奈は元々興味がなかったが、入江冬月のその言葉を聞いた瞬間、耳を立てた。
入江冬月がYを知っているということは、つまり、この人は藤本凜人を知っているということ?
ふん。
寺田凛奈は嘲笑うように笑った。
外の人々は大騒ぎになっていた。「あなたはYを知っているの?すごいじゃない、Yって一体誰なの?」
入江冬月はため息をついた。「Yは藤本グループにしか仕事をしないの。外部からの依頼は一切受け付けないわ。だから、Yが誰かを言っても意味がないのよ!」
千葉はその言葉を聞いて、がっかりして頭を下げた。「そうですよね。」
そう言って、彼は落ち込んだ様子で続けた。「私たちの部署は最近難しい問題に直面していて、QとYに助けを求めたかったんです。残念ながら、この二人とも知り合いがいなくて。」
その言葉を聞いて、入江冬月はわざと寺田凛奈のオフィスの方を見ながら話し始めた。「私が聞いた話では、Qは寺田グループのネットワークアドバイザーになったんじゃないかしら?問題があるなら、寺田さんに助けを求めてみたらどう?結局、寺田さんは寺田家のお嬢様なんだから、Qを呼ぶのは一言で済むことでしょう……」
千葉の目が一瞬で輝き、急いで寺田凛奈のオフィスの方を振り向いた。
寺田凛奈:「……」
ガラスのドア越しに、千葉の熱い視線が人を焼き尽くすほどだった。
寺田凛奈は目を伏せ、立ち上がってドアの所まで歩き、「サッ」と一気にカーテンを引いて、外からの視線を遮断した。
一同:「……」
千葉も口角を引きつらせ、そして落ち込んだ様子で小声で言った。「寺田さんは性格が孤独で、冷たくて傲慢だから、私たちは助けを求めづらいんです。」
入江冬月はここで立ち上がった。「じゃあ、私が試してみましょうか!」
敏感に入江冬月のその言葉を聞いた寺田凛奈は、さっとドアを開け、出口の方へ向かった。この女との付き合いは御免だった。
それに、Qの正体を明かすわけにもいかない。
ドアの前に立った時、挨拶をしようとした入江冬月:「……」
他の人々は急いで顔を背け、入江冬月の気まずい様子を見なかったふりをした。
入江冬月はため息をつき、戻ってきて話し始めた。「まあいいわ、私が手伝ってあげましょう。問題点を私に送ってください。夜にYに聞いてみるから。」