第554章 彼女を馬鹿にしやがって?

目の前のムヘカルは顔色が良く、監視されている様子は全くなく、囚人服さえ着ていなかった。逮捕された時の服装のままだった。

尋問室で彼は、まるでここが牢獄ではなく自分の家であるかのように、リラックスした姿勢で座っていた。

これは最初に逮捕された時のムヘカルの様子とは全く異なり、まるで将来何も起こらないと確信しているかのようだった。

寺田凛奈の質問を聞いて、ムヘカルは笑った。「凛奈、私は今とても元気だよ。木田柚凪に伝言を頼む。もう数日すれば、彼女に会いに行けるんだ!堂々と会いに行けるんだ!」

寺田凛奈は目を細めた。「なぜそんなことが言えるんですか?神秘組織の人間を日本に密入国させた件には、何か隠された事情があるんですか?」

ムヘカルは落ち着いていた。「凛奈、真相は今は話せないが、いずれ分かることだ。焦らなくていい、私は何も問題ない!」

寺田凛奈は「……」

少し考えてから、手にしていた袋を彼に渡した。

ムヘカルはすぐに袋を開け、中から調理済みの牛肉を取り出した。「ああ、この刑務所は何もかも良いんだが、食事だけは良くない。毎日草ばかり食べさせられて、肉が恋しくて死にそうだ!凛奈、次は木田柚凪にもっと肉を持ってきてもらってくれ……」

「……」

今でも食事の好き嫌いを言えるなんて、ムヘカルは本当に自分が無事だと確信しているようだ。一体何があって、彼の態度がこれほど変わったのだろう?

寺田凛奈はある可能性を思いついた。彼女は意図的にムヘカルの前に座り、ゆっくりと言った。「おじさん、本当のことを教えてください。もしかして、スパイ活動をしているんですか?」

ムヘカルはくすくすと笑い、答えずに寺田凛奈を一瞥した。

寺田凛奈は瞬時に理解した!

やはり自分の推測は当たっていた!

暗殺者連盟と神秘組織には何の関係もない。このことは彼女が誰よりも確信できた。なぜなら、暗殺者連盟の首席暗殺者として、彼女こそが暗殺者連盟の創設者だったからだ。

当初、暗殺者連盟をムヘカルに任せたのは、自分が管理するのが面倒だったからだ。

そして、彼女とムヘカルには暗黙の了解があった。それは日本では違法行為を行わないということだ!