寺田凛奈は彼女の手を軽く叩いた。「先に帰りなさい。ここのことは私が処理するから」
木田柚凪は自分が残っても役に立たないことを知っていた。むしろ、相馬歩人たちがムヘカルを追い詰めるための口実になりかねないと思い、頷いて立ち去った。
寺田凛奈はようやく特殊部門に入った。彼女はホールの様子を見ることなく、尋問室へと向かった。
すでに誰かが救急車を呼んでおり、医師が駆けつけて、尋問室で相馬さんの目を診察していた。医師は眉をひそめた。「これは、たとえ搬送しても無駄でしょう」
「そうですね。こめかみを貫通していて、すでに脳死状態と言えます。蘇生の必要はありません」
特殊部門の法医学者もため息をついた。「私も必要ないと思います」
彼らの言葉を受けて、寺田凛奈は目を伏せながら口を開いた。「あなたたちは気にしなくていい。ただ病院に搬送してください。私の医療チームが相馬さんの治療を引き継ぎます」