第573章 私が黒猫だ

入江冬月という女は無邪気な笑みを浮かべ、周りの人々は見るに堪えなかった。

皆が藤本柊花を慰め始めた:

「柊花、仕事だから協力したらどう?それに、入江冬月のアンケートはそんなに難しくないよ!」

「そうだよ、協力しようよ!私はあなたのアンケートの内容は知らないけど、私のは簡単だったよ。プライバシーを話すのも大したことないし、入江さんは守秘義務があるから!私たちは双方向の守秘義務契約を結んでるんだから!」

彼らが結んだ守秘義務契約は双方向のものだった。

つまり、彼らは入江冬月から受けた守秘義務契約の内容のアンケートについて外部に漏らすことができず、同様に入江冬月も彼らの回答を他人に話すことはできない。

さもなければ契約違反となる。

「柊花、あなたのアイドルって黒猫でしょう?入江冬月の言い方だと、アンケートを出せば黒猫に会わせてくれるみたいだよ!」

「そうだよ、柊花、こんないいチャンス!もし矢部が黒猫に会えるチャンスを得たら、私は絶対嫉妬するけど、あなたなら全然嫉妬しないよ!」

「……」

皆は藤本柊花が今大げさに反応しすぎていると感じていた。アンケートは心理アンケートで、生活の細かな部分から人の心理を分析するものだから、質問は当然日常的なものになる。

そこまで真剣になる必要はない。

入江冬月は相変わらず隣の女の子のような無邪気なキャラクターを演じながら、直接口を開いた:「そうですよ、私も倉田隊長と石山から、あなたが黒猫に会いたがっていると聞いて、特別に枠を一つ取っておいたんです。本当に要らないんですか?」

藤本柊花:「……要りません。」

この二文字は歯を食いしばるように答えた。

彼女がその二文字を言い終わると、入江冬月はため息をついた:「そうですか、それは残念です。」

そう言うと、その場で枠を発表した:「みなさん先ほどのアンケートにご協力いただき、ありがとうございます。残念ながら黒猫は人に会うのを好まないので、挨拶だけでも二人しか連れて行けないんです!後ほど黒猫とビデオチャットをしますので、名前を呼ばれた方は私と一緒に入室してください!千葉さん、矢部さん!」

「わっ!」と一斉に、周りの雰囲気が爆発した。

皆が羨ましそうに千葉と矢部を見つめ、一人一人が悔しそうに言い出した:「マジで運がいいな!」