倉田隊長は今、石山博義を心底憎んでいた。
相馬さんに対しては申し訳ない気持ちでいっぱいだった。結局、自分が相馬さんを撃ったのだから。
そしてムヘカルは、この数年間で彼に多額の金を与えてくれた。
だから当初、ムヘカルが特殊部門に逮捕されたとき、ムヘカルが身分を暴露し、特殊部門内で基金の調査が始まることを非常に恐れていた。
倉田隊長がムヘカルの脱獄を手助けしたのは、彼を日本から出国させ、将来また利用するためだった。
しかし残念なことに、ムヘカルは娘の結婚式のために残ることを選んだ。
倉田隊長は万が一に備えて、結婚式で狙撃手に発砲させ、彼を殺害しようとした。そうすれば全ての事実が露見するリスクはなくなるはずだった。
だが、寺田凛奈に邪魔され、その後ムヘカルは逮捕され、石山博義が厳重に監視していたため、手出しができなかった。
ムヘカルに強要され、相馬さんを呼び出すしかなかった。
しかし、どんなに計算しても、寺田凛奈と石山博義の執念を見落としていた!
もし石山博義があれほど執着していなければ、相馬さんが死亡した時点でムヘカルを有罪にするか、誰かに殺させれば、事態は制御できたはずだ。
残念ながら、石山博義はムヘカルを守りすぎた!
そして寺田凛奈というあの小娘が、遺伝子薬剤なるものを開発し、死ぬはずだった相馬さんを蘇生させた!
全て奴らが悪い、全て奴らのせいだ!
倉田隊長は自分の正体が露見したことを悟り、もう言い逃れる余地はないと判断し、怒りに任せて叫んだ。「それに寺田凛奈、お前を特殊部門に入れたのは神秘組織を捕まえるためであって、遺伝子薬剤を研究するためじゃない。なのにお前たちは何をした?お前たちは自分たちが私より高潔だと思っているのか?私が欲しかったのは金だけだ。だがお前たちは神秘組織と結託している。お前たちのやり方は神秘組織と何が違う?」
石山博義は彼の様子を見て深いため息をつき、「倉田隊長、今話しているのはあなたの殺人の件です」
倉田隊長は冷笑して言った。「私は殺人未遂が関の山だ!だがお前と寺田凛奈の問題も深刻だ。聞かせてもらおうか、もし遺伝子薬剤が病気を治し、人を蘇生させられるなら、我々が何年もかけて神秘組織と戦ってきた意味は何だ?!彼らの研究は人類にとって有益なものだ!」