倉田隊長は今、石山博義を心底憎んでいた。
相馬さんに対しては申し訳ない気持ちでいっぱいだった。結局、自分が相馬さんを撃ったのだから。
そしてムヘカルは、この数年間で彼に多額の金を与えてくれた。
だから当初、ムヘカルが特殊部門に逮捕されたとき、ムヘカルが身分を暴露し、特殊部門内で基金の調査が始まることを非常に恐れていた。
倉田隊長がムヘカルの脱獄を手助けしたのは、彼を日本から出国させ、将来また利用するためだった。
しかし残念なことに、ムヘカルは娘の結婚式のために残ることを選んだ。
倉田隊長は万が一に備えて、結婚式で狙撃手に発砲させ、彼を殺害しようとした。そうすれば全ての事実が露見するリスクはなくなるはずだった。
だが、寺田凛奈に邪魔され、その後ムヘカルは逮捕され、石山博義が厳重に監視していたため、手出しができなかった。