入江冬月の後ろには倉田健祐と二人のボディーガードが立っていた。
藤本凜人はソファに座り、冷たい表情で、威圧感のある雰囲気を醸し出していた。一瞬、寺田凛奈は揚城で初めて彼に出会った時の印象を思い出した。
このような時だけ、寺田凛奈は彼の高貴な身分を実感する。彼女の前にいない時の彼は、高慢な表情で、近寄りがたい雰囲気を全身から漂わせている。
彼は入江冬月など全く相手にせず、ただ書類を見ながら仕事を処理していた。
倉田健祐が入江冬月に話しかけた。「入江さん、そんな断定的な言い方はよくありませんよ。これまで何年も、私たちの手から何かを隠し通せた人はいません...」
入江冬月は彼を無視し、直接藤本凜人に向かって言った。「藤本さん、私を無視しても無駄ですわ。外の世論を恐れないんですか?もし私が突然消えたら、きっと人殺しの口封じをしたと噂されるでしょうね!」
藤本凜人は書類をめくり、万年筆を取り出して署名した。
倉田健祐が口を開いた。「ちっ、入江さん、藤本家を甘く見すぎですね。世論戦が私たちに効果があると思っているんですか?そんなニュース、Yがある限り、あなたが思うように発信できると思いますか?」
入江冬月は一瞬固まった。
彼女が倉田健祐を見ると、この秘書は強い自信に満ちていて、まるでそれらの事はすべて些細なことのように見えるようだった。
彼女は唇を噛んだ。「黙りなさい!私は藤本さんと話をしているの。あなたが口を挟む余地なんてないわ!」
倉田健祐は顎を上げ、冷笑した。「入江さん、分かっておいた方がいい。私があなたと話をしているのは、暇つぶしでしかありません。そうでなければ、私と話せる機会なんてあると思いますか?」
藤本凜人の特別秘書として、倉田健祐は京都で大きな発言力を持っていた!
一般の人が彼と一言話すのも苦労するほどで、彼はとても高慢だった。
入江冬月は怒りを覚えた。「あなたなんて何なの?私が誰だか知ってるの?私の身分は、あなたたちが手を出せないものよ!」
倉田健祐は嘲笑した。「あなたの身分?何なんですか?」
入江冬月は思わず口を開きかけたが、すぐに冷静になった。「私の言葉を引き出そうとしているの?言うものですか...」