第590話 相馬さんは死んでいない!!

ムヘカルの件は、組織内部で広まり、多くの人々がこの事を知ることとなり、広く注目を集めることとなった。

もちろん、これは倉田隊長の策略だった。

石山博義は実力があり、この数年で多くの人脈を築いていた。彼が事件に巻き込まれた後、多くの人々が彼のために発言し、監察部に圧力をかけた。

本来、監察部は石山博義を早期釈放する予定だったが、相馬さんの死亡と倉田隊長の騒ぎで、彼を釈放するのが難しくなった。

この時期に強引に釈放すれば、多くの人々の不満を買うことは明らかだった。

特殊部門の大会議室は、百人を収容できる広さがあった。

特殊部門の全職員が出席していた。

石山博義が規則に違反して相馬さんに遺伝子薬剤を使用した件について、本日判決が下されることになっていた。

石山博義の行動は人命救助が目的だったため、監察部門も処罰の方法に迷っていた。

この時、会議室は既に満員状態だった。

出席者の大半は二つの派閥に分かれていた。

一方は石山博義の忠実な支持者たちで、長年彼と共に働き、彼の人柄を信頼していた。彼らは「石山も人命救助のためにやったことだ!もしこれを厳密に規則通りに扱うなら、今後同僚が怪我をした時、規則違反になるからといって救助を優先しないということになるのか?」と主張した。

もう一方は康之を中心とするグループだった。

相馬歩人は深い悲しみに暮れ、落ち込んでいたが、康之は憤慨して直接反論した。「なぜムヘカルの有罪判決を引き延ばしているんだ?しかも私の尋問も許可しない!絶対に何かおかしいことがある!」

「そうだ、遺伝子薬剤がどんなものか、俺たちが知らないとでも?あれは人を害する物だ!毒薬だ!我々はずっとこれと戦ってきた。遺伝子薬剤を作る神秘組織と戦うために、どれだけの同僚が犠牲になったか?それなのに最後に自分でそれを使うなんて、笑い話じゃないか!」

石山博義の支持者が口を開いた。「でも石山は人命救助のためにやったんだ!」

「しかし相馬さんは死んだ!救えなかったじゃないか!事実が我々の主張が正しかったことを証明している!石山は極端すぎる、特殊部門は彼の独裁になってしまった!それに、ムヘカルの裁判も、なぜいつまでも引き延ばすんだ?証拠は揃っているのに!」