倉田隊長が病院に到着すると、相馬歩人が相馬さんの病室の外で眠り込んでいるのを見つけた。
彼は警戒しながら周囲を見渡した。
長年のプロフェッショナルとして、これは石山博義と寺田凛奈による罠ではないかと疑っていた。
二人が監察部に連行されたとはいえ、倉田隊長は警戒を緩めなかった。
彼は常に敏感で疑り深く、細心の注意を払う人物だった。そうでなければ、かつて石山博義の師匠になることもなかっただろう。
表向きの短気で正直な性格は、すべて彼の演技だった。上層部に無害な印象を与え、昇進を早めるためだった。
事実、彼の策略は成功を収めた。
その外見は多くの人を欺き、警戒心を解かせた。職場での数々の罠も、彼の演じた大雑把な性格のおかげで相手に油断させ、形勢を逆転させることができた。
だからこの時も、倉田隊長は即座に病室に入って相馬さんを殺すのではなく、まず周囲を観察することにした。
長年の経験と並外れた直感により、周囲に監視の目がないこと、自分が罠にはめられていないことを確認してから、そっと病室のドアを開けて中に入った。
病室では、相馬さんがベッドに横たわっていた。ここ数日の昏睡状態で、かなり痩せており、頭部は白い包帯で巻かれ、目を閉じたまま意識不明の状態だった。
倉田隊長はまず病室内を確認し、監視カメラがないことを確かめた後も、すぐには毒を注入せず、相馬さんのバイタルサインを観察した。
心拍数は60台で、非常に安定していた。通常より遅いものの、健康的な範囲内だった。
他の数値も良好で、相馬さんが確かに生きていることを示していた。
あの遺伝子薬剤は確かに効果があったようだ。
倉田隊長はそう考えながら、撮影される可能性のある角度をすべて避け、ポケットから致死性の化学薬品を取り出し、相馬さんの体内に注入した。
その動作は一連の流れで行われ、まったく躊躇することなく、プロフェッショナルの技量を示していた。
それらを終えると、一歩後ろに下がり、モニターが鋭い警告音を発し始めたところで、相馬歩人が目を覚ます前に彼を揺さぶり、大声で叫んだ。「歩人、早く来て!相馬さんがどうかしたみたいだ!」
相馬歩人は朦朧とした目を開け、モニターの警告音を聞いて大きく驚いた。医療スタッフも駆けつけてきたが、残念ながら、モニター上の心電図は最終的に一直線となった。
……