第588話 倉田隊長が動き出した!

倉田隊長はずっと冷静さを保っていた。

彼は最初から、こめかみを撃たれた人間が生き残れるとは信じていなかった。

だからこそ、手を出さず、寺田凛奈に証拠を残すこともなかった。

しかし、事態は次第に不可解になっていった。

監察部の法医さえも、相馬さんが目覚める可能性があると言い出した。

だが、慌ててはいけない。

目覚めたとしても、以前のことを覚えているとは限らない!脳の新しい細胞に過去の記憶が残っているはずがない!

彼は我慢できずに尋ねた:「彼は以前のことを覚えているのでしょうか?」

法医は答えた:「記憶は中枢神経に存在します。神経が破壊されていなければ、記憶は残ります。相馬さんが目覚めた後の様子を見る必要がありますね!」

倉田隊長はその言葉を聞いて呆然とした。

法医はそのまま病室に入り、相馬さんの状態を観察し続けた。

倉田隊長は廊下に立ち、突然向きを変えて外に向かおうとした時、リリが寺田洵太を支えながら廊下を歩いているのを目にした。

全身が麻痺していた寺田洵太が、今では人の手を借りずに長い距離を歩けるようになっていた。

リリは彼を褒めていた:「すごいじゃない!回復が早すぎるわ!」

寺田洵太は説明した:「ああ、体が日々修復されているのを感じるんだ。骨細胞が成長しているのも分かるし、体の中でシュワシュワと泡立つような感じがして...本当に不思議だよ!凛奈のいじゅつが凄いのは知っていたけど、まさかここまでとは!」

リリもうなずいた:「今やっと分かったわ、みんながなぜ遺伝子薬剤を求めるのか。本当に素晴らしいわ!」

「……」

倉田隊長は彼らの会話を聞きながら、再び階下へ向かった。

病院の下でタバコを一本吸い、心の中の不安は増すばかりだった。

彼は吸い殻を消して専用のゴミ箱に捨て、車に乗って特殊部門へ向かった。

特殊部門に入るなり、周りの人々が集まってきて、尋ねてきた:「倉田隊長、石山はどうなったんですか?本当に規則違反したんですか?」

「倉田隊長、康之をそろそろ釈放すべきじゃないですか?」

部門の人々は、以前より倉田隊長に対して明らかに親しみを持つようになっていた。

それは石山博義が事件後、すぐに相馬さんの仇を討とうとしなかったことで、みんなの心に不満が残っていたからだ。