第613話 子供！！

地下室は薄暗かった。

入江冬月は寺田凛奈を見つめていた。彼女の声は低く、しかしその低い声には清々しさが混ざっていて、聞いていると傲慢で威圧的に感じられた。

まだらな光が彼女の顔に落ち、その女性の姿を明暗交互に照らし出し、まるで地獄から這い上がってきた使者のようだった……いや、まさに地獄の悪魔そのものだった！

入江冬月は緊張のあまり息を止めていた。

彼女は突然、特殊部門にいた時のことを思い出した。あのボディーガードを尋問した後、自分が部屋に入ると、彼は大声で叫んでいた。全部話すから、もうこの悪魔に尋問させないでくれと！

そして、当時黒猫の功績は実際とても有名で、世界レベルで最も口の堅い工作員と呼ばれ、どんな任務を受けても厳重に秘密を守り、工作員界の模範的存在となっていた。

しかしその人物も、黒猫に打ち負かされた。

ある任務の遂行中、黒猫はたった5分で、彼の口から依頼主が誰なのかを吐き出させた……

5分……

入江冬月の心は崩壊した。藤本凜人と共に藤本家に来た自信が一気に抜けていった。

彼女は厳しい訓練を受けてきたと自負していたが、あのボディーガードたちよりは少し強いかもしれないが、最強工作員には全く及ばない！

そのため、寺田凛奈が手を出す前に、彼女は急いで目を閉じ、大声で叫んだ。「話します、何でも話しますから！」

寺田凛奈の手が少し止まった。

彼女は両手を入江冬月の椅子の両側に置き、彼女に迫った。威圧感たっぷりに尋ねた。「あなたと入江桂奈はどういう関係？」

入江冬月は唇を噛んだ。

彼女が黙っているのを見て、寺田凛奈は冷笑した。「私がどうやって最強工作員の口を開かせたか知りたい？実はとても簡単よ。私のメスは繊細で、彼の組織を一層一層切り取ることができる。麻酔なしで、皮膚が少しずつ剥がされていく感覚を味わわせることができるの……」

そう言いながら、ポケットから小さな精巧なメスを取り出した。

入江冬月は震え上がり、急いで叫んだ。「入江桂奈は私の兄です！」

寺田凛奈の動きが止まった。

藤本凜人さえも動きを止めた。

入江冬月は叫び続けた。「入江桂奈は私の兄です！私たちは入江家の者です！だから私に手を出すことはできません。さもないと、入江家があなたたちを許しません！」

寺田凛奈は目を細めた。「つまり、あなたは本当に神秘組織の人間なの？」