第606章 なぜ妊娠したの?!

寺田凛奈は臼井陽一の向かいに座り、肺がんで日に日に痩せていく男を見つめた。彼の深い瞳には世の中を見透かしたような諦めが浮かんでいた。

その目は彼に知的な印象を与えていた。

彼はゆっくりと口を開いた。「君のお母さんがどうやって神秘組織に入ったか知っているかい?」

寺田凛奈は首を振った。「知りません」

臼井陽一はゆっくりと話し始めた。「実は、彼女は騙されて入ったんだ」

寺田凛奈は驚いた。

臼井陽一は続けた。「神秘組織は当時、研究会として小さな団体を立ち上げていた。君のお母さんは、彼らが意図的に仕掛けた難問や餌に引っかかって加入させられたんだ。でも、君のお母さんは組織が本当は何をしているのか全く知らなかった...ただ遺伝子改造に強い興味を持っていただけさ。人間の遺伝子には、常にこういった欠陥があるものだ。誰だって自分の遺伝子を完璧に近づけたいと思うだろう?君のお母さんは高潔を自負していたし、当時の医術の研究では既に頂点に達していた。