第605話 あの時の真相!

「まさか!彼女がQだとしたら、どうして黒猫なんてことがあり得るの?」

誰かが信じられないと言った。「それに寺田さんは、力仕事なんてできそうにない、お嬢様然とした方なのに、一流の殺し屋なんてあり得ないでしょう。」

一流の殺し屋といえば、トップクラスのスパイなのだ!

そんな人は、きっと体中の筋肉が鍛え抜かれていて、毎日トレーニングをしているはずだ。寺田さんはあんなに暇そうで、寝てるか寝る準備をしているかのどちらかなのに、彼女のはずがない?

この言葉に、皆が納得した。

確かに、特殊部門の中で、筋肉を維持している人々は毎日トレーニングが必要だ。寺田凛奈は痩せて華奢に見えるし、そんな力があるはずがない。

誰かが口を開いた。「彼女が先ほどあの数人を尋問したのは、きっと黒猫がアドバイスしたんでしょう!」

この考えは、皆をより安心させ、受け入れやすいものだった。もし寺田凛奈が黒猫だとしたら、それは常識外れすぎるからだ。そこで皆が次々とうなずき、この説に同意した。

石山博義も実は寺田凛奈が黒猫かどうか確信が持てなかった。

しかし武術に関しては、寺田凛奈は瀬戸門の大師姉だ。彼は、一人の人間がQであり、かつ瀬戸門の大師姉であるなら、その人物が黒猫である可能性は非常に高いと考えていた。結局のところ、トップクラスのスパイ、特級の殺し屋は、何をするにしても、強靭な武力と知恵の他に、最先端の技術についていける能力も必要なのだ。

確信が持てないことは、今は言わないでおこう。

しかし——

石山博義はゆっくりと口を開いた。「黒猫の身分は神秘的で、会いたいと言えば会える、雇いたいと言えば雇えるような存在ではない。しかし寺田凛奈はムヘカルと知り合いで、むしろ黒猫を最もよく知る人物かもしれない。」

その人々はここまで聞いて、まだ納得がいかない様子だった。「ムヘカルは今や我々の仲間です。ムヘカルから黒猫に招待を出せばいいじゃないですか?彼女が黒猫を知っているのも、おそらくムヘカルを通じてでしょう?」

この言葉が出た途端、石山博義の声は急に冷たくなった。彼は嘲笑うように笑った。「よくもムヘカルの名前を出せたものだな?」

一言で、皆が口を閉ざした。