三十分後、入江冬月は疲れ果てた表情で他のメンバーと共に取調室から出てきた。
他のメンバーは入江冬月の表情を見て気まずそうな様子で、康之が口を開いた。「すぐに新しい取調内容を石山さんに送ります。あなたの処遇については、石山さんの判断次第です。」
そう言うと、彼は急いで脇に寄り、石山博義に電話で報告に行った。
他のメンバーは入江冬月を見つめていた。
五分後、康之が戻ってきた。
彼は入江冬月を見つめながら言った。「石山さんが言うには、特殊部門にはあなたのような偽りの人間は必要ない、出て行ってくれと。」
入江冬月は皆を欺いたが、彼女の学歴は偽造ではなかった。そして、Qを知っている、黒猫を知っているという発言も口頭のものだけで、実質的に追及できる責任はなかった。
一般人が高官と知り合いだと自慢するようなもので、嘘だとわかっても逮捕することはできない。
法律に違反していない限り、それはできないのだ。
入江冬月も法律違反はしていない。彼女の過ちと言えば、せいぜい職務怠慢程度で、学歴などは本物で、提案した取調方法も科学的で厳密なものだった。
ただ、彼女の取調結果が最終的な答えと異なっていただけだ。
入江冬月は唇を噛みしめ、顔を上げなくても周りの人々の視線を感じることができた。彼女は指を握りしめ、突然叫んだ。「こんな扱いは許せません!石山さんにもこんな扱いはできないはずです!私の取調方法も結論も、何の問題もありません!寺田凛奈の母親が神秘組織のナンバー2だったことは、疑う余地のない事実です!」
今でも現実を受け入れられない彼女を見て、康之はため息をついた。「でも、彼女は神秘組織を裏切ったんです!この重要な事実を、あなたは引き出せなかった!得られた結論は、完全に正反対のものでした!」
そうだ……
渡辺詩乃は確かに神秘組織のナンバー2で、遺伝子薬剤開発の重要人物だった。しかし、その後神秘組織を裏切り、直接日本に逃げ帰った。
国内で逮捕された後、刑務所から逃げ出したのも、神秘組織の追手から逃れるためで、そのために揚城に逃げ込んだのだ!
しかも!
渡辺詩乃は逃亡する際、神秘組織の遺伝子薬剤開発の重要な要素を持ち去り、そのために彼らの遺伝子薬剤開発はここ数年常に何かが欠けており、開発された遺伝子薬剤も不完全なものばかりだった。