第643章 カッコいい寺田さん

春姫：！！

彼女は完全に驚きのあまり、その場で固まってしまった。

他の人たちが駆けつけてきた後になってようやく我に返った。

今この時、子供を落とすわけにはいかない！

今落とせば、あまりにも作為的すぎる。それに、もう三原伶が押したことにはできない！

春姫はどうしていいかわからなくなった。

階段の入り口で。

寺田凛奈は三原伶の応急処置を行っていた。

彼女が落ちた後、血がゆっくりと流れ出し、全身が非常に衰弱していた。寺田凛奈は特に彼女の体を診察し、骨折と軽度の脳震盪だと分かり、命に別状がないことを確認してようやく安堵した。

彼女が何か言おうとした時、三原璃が駆けつけて叫んだ：「伶、どうしたの？！」

三原伶は痛みに苦しんでいた。腕も足も痛かったが、それでも春姫をじっと見つめながら言った：「春姫が私を押したと濡れ衣を着せようとしたの。彼女を助けようとして、私が誤って落ちてしまったの」

皆名家の人間だ。このような小細工は、誰もが心得ているものだった。

彼女の一言で、三原璃は全てを理解した。

彼女は怒りで目を赤くし、三原伶を指差して叱りつけた：「馬鹿なことを！たとえ彼女が濡れ衣を着せることに成功したとしても、私たちには証拠があるのよ！」

三原璃はすでに春姫の不倫相手、つまりその子供の父親を見つけ出していた。

今日、谷本蒼樹に全てを渡すつもりだった。

しかし三原伶は苦笑いを浮かべた：「お姉ちゃん、谷本家のことを分かっていないわ。子供がいなくなれば、最も直接的な証拠も消えてしまう。そして体面のために、彼らは認めないことを選び、信じようとしないわ」

もし子供がいなくなれば、春姫と不倫相手は何もなかったと言い張ることができる。

たとえ春姫が三ヶ月前に不倫相手と関係を持っていたとしても、春姫はずっとそういう乱れた私生活を送っている人間じゃない？谷本家は私たちの言うことなど信じないわ。

だから、子供に何かあってはいけない！これが最も直接的な証拠なの！

三原伶は痛みで顔が真っ青になり、救急車が到着する前に、そこに倒れながら三原璃に言った：「たった今、分かったの。女は自分で立ち上がらなければ、永遠に人に見下されるってことを」

「お姉ちゃん、今から私は強くなるわ」

「ほら、実は今すごく痛いのに、私泣いていないでしょう」