第636話 5人家族

普通の人でさえ、子供の母親でもないのに、四歳の子供を一週間も飢えさせるなんて、どうしてできるの？！

藤本凜人でさえ、入江桂奈をあれほど嫌っていても、入江和夜を見てからは、この子を虐待したことは一度もなかった。

入江冬月は藤本凜人の言葉を聞いて、怯えた。彼女は唾を飲み込んで、「あ、あなた何を言っているの？私は彼の実の母親よ。信じられないなら、入江和夜に聞いてみて！」

入江和夜は傍らに立ち、困惑した様子で藤本凜人を見つめていた。なぜ突然入ってきて、そんなに怒っているのか分からなかった。

でも、日本に帰国する前の父の言葉を思い出した。

父は、入江冬月に協力するように、ただ暴露しなければいいと言った。

だから日本に来てから、一度も入江冬月を叔母さんと呼んでいなかった。今、入江冬月にこう聞かれて、困ってしまった。

入江冬月をお母さんだと嘘をつくのは嫌だった。

小さな体が悩みながら口を開いた：「彼女は...」

「黙れ」藤本凜人が突然低い声で叱りつけた。男の周りには威圧的な雰囲気が漂い、この暗い地下室で、まるで生死を支配する王のようだった！

入江和夜はその二言に怯えた。

そして男の低い声が聞こえた：「執事」

「はい、ご主人様」

「坊ちゃまを上に連れて行って、寝かしつけてくれ」

「かしこまりました」

執事は即座に入江和夜を抱き上げ、外へ向かった。

入江和夜は初めて恐怖を感じた。彼は困惑して振り返り、藤本凜人の背中を見つめた。その背中は遠ざかっていくはずなのに、彼の目には、どんどん大きくなっていくように見えた...

ついに、執事に抱かれて部屋を出て、階段を上がった。

入江和夜が客室に入ったことを確認してから、藤本凜人は入江冬月を見た。

そして、彼は振り返って地下室のドアを閉めた。

入江冬月は彼を見つめ、心の中に絶望が湧き上がってきた...

彼女は震える声で言った：「藤、藤本さん、あ、あなた何をするつもり？」

「家に送り返してあげる」

...

...

地下室から聞こえる悲鳴は、防音壁に遮られていた。

上階の客室で、入江和夜はベッドに横たわり、目を閉じたまま、耳をベッドにぴったりとつけて、下階の音を一生懸命聞こうとしたが、何も聞こえなかった。

小さな体が思わず寝返りを打った。

そして目を開けた。