第650章 あの狂人

この言葉を聞いて、三原璃は少し戸惑い、しばらく答えられなかった。

しばらくして、彼女はため息をついた。「実は6年前、私は一人の狂人を助けたことがあるの。その時、彼はボロボロの服を着て、道端で飢えて倒れていたわ。私は食べ物とお金を少し渡したの。そしたら、その人は恩返しとして、私にある処方箋をくれたの。」

三原璃はため息をついて続けた。「その処方箋は、最初は信じていなかったわ。家に持ち帰って、漢方医学を少し知っている母に見せたら、これは神薬だと言われて。それで私に薬丸を作らせたの。結婚後、子供が欲しい時に一粒飲んだら、本当に三つ子を産んだわ。」

ここまで話して、三原璃は続けた。「その後、妹にも使わせたら、彼女も三つ子を産んだの。私が二回目に使った時も三つ子だったけど、妹は欲張りで、二人目の時に二粒も飲んじゃって、四つ子を産んでしまったの...」

寺田凛奈:?

これってコントロールできるの?

彼女は少し躊躇してから尋ねた。「その狂人はどんな顔をしていたの?」

狂人の話を聞いて、彼女はある可能性を思いついた。それは病院でリリが世話をしている老いぼれのことだ。

老いぼれは前回の食中毒以来、ずっと入院していた。その後、寺田凛奈は鍼灸の方法をリリに教え、老いぼれの治療を続けさせていた。

そう言えば——

リリは定期的に老いぼれに鍼灸をし、寺田洵太の薬の投与も定期的に行い、さらにDNAの調査を常に行って、DNAの配列を元に戻し、DNA照合にも使用している……

本当に忙しいわね。

うん、帰ったらリリの給料を上げなきゃね!

寺田凛奈がそう考えている時、三原璃が口を開いた。「普通の人の顔つきよ。かなり汚れていたけど、写真は残してないわ。」

寺田凛奈は携帯を取り出し、老いぼれの写真を見せた。「この人?」

三原璃は顔の変形した人を見て、すぐに首を振った。「違うわ。私が助けた狂人は、支離滅裂な話し方だったけど、顔は変形していなかったわ。左頬に大きな黒子があって、その黒子に一本の毛が生えていたのを覚えているわ。」

老いぼれは20年以上前に顔が変形していた。

三原璃が助けた人は6年前だった。

6年前……それは寺田凛奈が妊娠する直前の時期!

寺田凛奈は突然尋ねた。「どこで助けたの?」