寺田凛奈は車で直接藤本凜人の邸宅へ向かった。
彼女が玄関に入った瞬間から、誰かが藤本凜人に知らせていたので、寺田凛奈が車を停めた時には、藤本凜人は既に駐車場で彼女を待っていた。
寺田凛奈は車から降りると、藤本凜人の表情が少し厳しいのを見て、思わず尋ねた。「どうしたの?」
藤本凜人は少し黙った後、ようやく口を開いた。「芽の誕生日を祝いたいんだ。」
誕生日か……
寺田凛奈は少し驚いた。そうだ、あと5日で寺田芽の誕生日だった。
これまで毎年のこの日は、芽の誕生日であると同時に、建吾を失った日でもあったので、彼女は芽の誕生日をあまり祝うことがなかった。
それに海外にいた時は、親族も少なく、毎回叔母が芽にちょっとしたプレゼントを用意し、ケーキを買うだけだった。
藤本凜人の言葉の意味は、もしかして盛大な誕生日パーティーを開こうということなのだろうか?
一体何があったのだろう?
寺田凛奈が躊躇いながら彼を見ると、藤本凜人はため息をつき、静かに話し始めた。「立派な誕生日パーティーを開いて、芽と建吾を正式に紹介したいんだ。」
これまでも彼は建吾を誘拐から守るため、外部の人間に建吾の姿を見せないように徹底的に保護してきた。
しかし今や建吾は5歳になり、これ以上隠し続ける必要もない。少なくとも京都の人々に建吾と芽を知ってもらう時が来たのだ。
デブちゃんが言ったように、彼がずっと隠し続けているのは、まるでこの二人の子供を認めるつもりがないかのようだった。
寺田凛奈は何が起きたのかわからなかったが、彼女にとってはどうでもいいことでも、寺田芽が喜びで跳ね回るようなことなら、いつも反対はしなかった。
そうだ、芽は賑やかなことが大好きだった。
小さい頃からルーシー姫の誕生日パーティーが毎回とても賑やかで、たくさんの人がプレゼントを持ってくるのを羨ましがっていた。でも彼女には友達があまりいなかった。
彼女もお姫様のように綺麗なドレスを着て、優雅に参加者一人一人にお礼を言いたかった。
今、その願いを、お父さんが叶えてくれるのだ。
寺田凛奈は尋ねた。「藤本家で開くの?」
藤本凜人は頷いた。「ああ、執事に手配させる。君は心配しなくていい。」
それならなおさら問題ない。
寺田凛奈はすぐに同意を示した。
二人は話しながら、リビングルームへ向かった。