その紙切れはかなり古いもので、周りが擦り切れて端が出ていましたが、三原家によって大切に保管されていました。
紙はかなり古びており、少し黄ばんでいて、軽く引っ張っただけで破れてしまいそうでした。
寺田凛奈は少し黙り込んだ後、突然尋ねました。「この紙、私にいただけますか?」
三原璃は凛奈の表情を見て、事態が深刻であることを察知し、答えました。「はい、大丈夫です。実は、この紙の配合は既に記録してありますので、これは記念として保管していただけなんです。」
この紙は三原家にとって、特別な意味はありませんでした。
寺田凛奈は頷き、紙を慎重に折り目に沿って折り、自分のポケットに入れました。
顔を上げると、三原璃を見て、お礼を言いました。
三原璃は言いました。「私の方こそ感謝しています。ただ、この件は外部に漏らさないでいただけますか。」
三つ子の秘薬を皆が求めてくるようになったら、面倒なことになるからです。
寺田凛奈は理解し、頷きました。
彼女と藤本凜人は長居せず、三原家を後にしましたが、出る前に、藤本凜人は突然足を止め、三原璃に向かって言いました。「今後何かあれば、直接私に連絡してください。」
これは藤本凜人からの約束でした。
確かに、寺田凛奈が三原家を助けたとはいえ、三原璃はこれらの物を出さなくても良かったのです。今、三原璃がこれほど協力的なので、藤本家も彼女たちを見捨てるわけにはいきません。
さらに、三原璃が配合を谷本奥様に渡さなかったことで、谷本家との確執が生まれたことでしょう。藤本凜人のこの言葉は、三原家への約束でもありました。
藤本家は谷本家の味方にはならない!
三原璃はほっと胸をなでおろしました。
彼女がこれほど協力的だったのは、藤本家と寺田家にこの件に介入してほしくなかったからです。三原家も彼女の夫の家も谷本家を恐れてはいませんでした。彼らが恐れていたのは、ただ藤本家だけだったのです!
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三原家を出てから、寺田凛奈はずっと黙ったままでした。
車に乗り込んでも、藤本凜人は彼女の表情が優れない理由を追及せず、ただ尋ねました。「どこへ行きますか?」
寺田凛奈は暫く沈黙した後、答えました。「渡辺家へ。」
藤本凜人は少し間を置いて、渡辺家へ向かって車を走らせました。