字は渡辺詩乃のものだが、当時彼女を陥れた人物が渡辺詩乃だとは限らない。ただ、あの狂人が少なくとも渡辺詩乃と知り合いだったということは示している。
当時彼女を妊娠させるよう仕組んだのは、間違いなく入江桂奈だ。
そうでなければ、入江冬月が藤本凜人との写真を持っているはずがない……
そして、もし母の側近が自分を妊娠させるよう仕組んだのなら、入江桂奈が彼女の妊娠の全過程を知っているはずがない。
寺田凛奈は眉をひそめ、頭の中が混乱していた。
当時の出来事は謎のようだった。
一体何が起きたのか?
母が残した三つ子を産める処方箋が、なぜあの老いぼれの手の中にあったのか。そして当時自分が産んだのは双子なのか、三つ子なのか!
そんな疑問が、この瞬間、もつれた糸のように絡み合い、解きほぐすことができなかった。