第693章 誕生日プレゼント(8)

寺田凛奈は、入江桂奈からプレゼントが届くとは思ってもみなかった。

目の前の執事も表情を引き締めて、口を開いた。「配達員が持ってきたものです。調べたところ、その人は確かに普通の配達員で、この地域の配達を何年も担当している者です。発送元は京都でした。」

京都で……

入江桂奈が帰国したの?

彼女の心は一瞬凍りついた。

正直に言えば、入江和夜は幼い頃から入江桂奈と一緒に育ち、入江桂奈の性格が染み付いていて、彼女に育てられた価値観は少し歪んでいた。

入江桂奈は善人ではない。それに和夜の話から察するに、彼女は和夜に対してもあまり良い態度ではなかった。

そもそも、和夜が彼女のもとを離れたのは、入江桂奈に連れて行かれたからではないか?

誘拐犯があなたの子供を殺さなかったからといって、その人に感謝の念を抱くべきではない。

だから寺田凛奈は二人が再び連絡を取り合うことを望んでいなかった。

それに、彼女から見れば、入江和夜は入江桂奈の駒に過ぎない。入江桂奈の入江冬月に対する態度を見れば、この人に感情がないことは明らかだった……

彼女は手の中の箱を見つめ、ゆっくりとプレゼントの箱を開けた。

中身を見た瞬間、彼女の目が驚きで見開かれ、ほとんど反射的に箱を閉じた!過去の出来事と臼井陽一が彼女に話したことを思い出し、彼女の心臓は激しく鼓動し始めた。

「どうしたんだ?」

彼女が慌てている時、藤本凜人の低い声が後ろから聞こえ、彼女は少し安心を覚えた。

彼女が振り返り、目を細めて何か言おうとした時、周りの人々が藤本凜人を見つけ、すぐに挨拶しに寄ってきた。

寺田凛奈は黙り込んだ。

藤本凜人が口を開いた。「寺田おじさんは上階の休憩室にいる。先に行っていてくれ。すぐに行くから。」

「わかった。」

寺田凛奈は入江桂奈からの箱を持つ指に力を入れ、まるでその箱が壊れてしまうのを恐れているかのようだった。彼女は深く息を吸い、階段を上がった。

部屋に入る前に、下から突然驚きの声が聞こえた。

寺田凛奈が下を見ると、何人かが檻を持っていて、その中にはウサギや猫、犬が入っているのが見えた。

そして入江和夜は嬉しそうにそれらを囲んでいた。「ことり、三号、兎五、みんなどうしてここに?」

寺田凛奈:?